『ゆれる』���西川美和

ゆれる
西川 美和
ポプラ社  2006-06

by G-Tools

 しっかり読んだのに、メモを取る前に返却期限を過ぎてしまい、時間に余裕がなくてそのまま返しちゃったのが後悔。人間の感情の襞のイヤーなところを畳みかけてくるところがなかなか良かった。現代文学ではあんまりこういうモチーフの小説がないから。近代小説だとほとんどこういうモチーフなのにな。やはり、現代の問題意識というか興味というかは、人間性ではなくて欲望だからなんだろうかな���近代小説も、もちろん欲望がテーマになってるのもたくさんあるけど、人間性がテーマになってるのも、それと同じくらい存在する気がする。
 『ゆれる』は、人間性の問題というより、タイミングの問題なんじゃないかなこれって、と思うとこがない訳じゃなかったけど、妬んだり決めつけたりというネガティブな人間性でドラマが成り立ってて面白かった。最も認識に残ったのは、血のつながりがある関係であっても、あまりに繰り返すと、決め付けが固定してしまうんだなあという怖さ。我が子であっても、「こういうヤツだ」って決めつけてしまうくらい疲れてしまうんだなあと、その点は怖かった。