『家日和』���奥田英朗

家日和
奥田 英朗
集英社  2007-04

by G-Tools

 「家にいる人」が主人公の���編の短編集。

 取り扱ってるテーマが失業だったり別居だったり、結構ヘヴィだけど、読中シリアスになることはない。例えば勤め先が倒産した裕輔が主人公の『ここが青山』は、裕輔もあっけらかんとしていれば妻もあっけらかんとしたもので、主夫業に自然と滑り込んでいく様がテンポよく語られる。突然、妻から別居を言い出され家に残された夫が卒なく独り暮らしを楽しんでいく様が描かれる『家においでよ』も、妻が出て行った理由がいまいちピンと来ないという、典型的な鈍感夫が、あまり深刻になることもなく、独り暮らしを楽しむうちに事態が好転する、というような話。

 どの話も、主人公は飄々として淡々として、あまり物事に執着しない。そういうスタンスが物事をうまく運ばせる好例集、というふうにとらえることもできる。読んでて心地よいんだけど、いくらなんでもちょっと事態を軽く捉え過ぎじゃないか���と主人公に対して思うところもあって、そこが軽くて物足りない。なんでも深刻になり過ぎてもいい結果にならないよ、というのは頭では分かっていても、なかなかそうはいかないよ…というような悩みが描かれているのがやっぱり好み。『家日和』は、でてくる事件が重大事なだけに、肩透かしを食らったような気になるところが若干残念。


 

p54「自分の供した料理がおいしくないというのは、身の置き場がない。」
p122「家に自分の遊び場が欲しければ、それなりの大きな家を建てられるとか、別荘を持てるとか、そういう甲斐性が求められるわけよ。建売住宅で男の王国は作れない。マイホームは女の城だ」
p222「ロハスを俎上に載せたくて仕方がないのである。」