ペナルティ

これも大阪の橋下市長の発案ですが、所定の学力に到達しない生徒はたとえ小中学生でも留年や科目の再履修をさせるべきだという案が議論されています。そもそものアイディアは教育評論家の尾木直樹氏で、小中学校での学力の底上げを図るには必要だというのです。(尾木氏ご本人は大げさに取り上げられて困惑しているようですが)

橋下市長の小中学留年案。実際に学力低下が問題になっている以上、必要な学力を習得するために時間をかけるべきという考え方は賛成なんですが、それでも浮かんでくる違和感を整理すると:

  • なんらかのペナルティがあって初めて人はモチベーションを上げる、という発想が感じられる。ペナルティだけで人を動かそうとする方策は、混乱を招くことが多い。実は「飛び級」とかも並行して議論されていたらごめんなさい。
  • そもそも小中学生時代は、学力不足の責任は本人ではなくて親・先生にあると思う。それを一元的に本人の責任に帰して、ペナルティとして留年させるというのは本人への責任度合いが大き過ぎると思う。
  • その、「指導力不足」をどう改善していくのか、という議論がもうひとつわからない。「指導力不足」を数値化するために、「実際に落ちこぼれた生徒がこれだけいます」というのを明示しようとしている気すらする。

なぜ学力向上に躍起になるかというと、やはり学力のレベルは、市民生活のレベルと密接に関連性があるからと思われる訳です。教育浸透度の高い地域のほうが、犯罪率は低く生活水準は高いと一般的には言われるから。

そこへ行くと、率直に言って大阪市は、相当な体たらくの市だと思います。少なくとも数字上は。これを改善するために教育を根本から変える、まず基礎学力の低下を防ぐために義務教育の小中から手を付ける、という理屈は分からなくはないですが、それよりも、大阪に蔓延る「ズル」を丁寧に取り除く作業をやっていくほうが、市民生活のレベルを元に戻していく正攻法じゃないかなと思います。市民生活のレベルを元に戻す手立てとして、小中学生に「ペナルティ」を設ける、というのだとしたら、やはり賛成しかねる、と言ったところだし、純粋に学力向上を目指しているのだとしたら、他にやり方はあるだろうと思います。