イオンバイクは文化か?

1万円台の激安シティサイクルを買ってあまりメンテもせず錆だらけにする人と、高級ロードバイクを買って3,4年で乗らなくなる人、どっちが自転車を愛してる?そんなに差があると言える?

僕はロードバイクに乗ってるけれど、シティサイクルを否定する物言いには懐疑的。おおよそ、「自転車文化」を語る向きは、シティサイクルを目の敵にしてる物言いで、例えば、自転車文化が成熟しているヨーロッパではママチャリに乗ってる人なんていない、とか言うけれどそりゃ嘘で、ここ数年で何度かヨーロッパに旅行しているけれど、ママチャリはごまんとあるし、自転車を愛するヨーロッパでは放置自転車なんてないって言うけど、放置自転車もごまんとありました。それに、日本で街乗りレベルで自転車を楽しむなら、シティサイクル=ママチャリがいちばん快適なはず。そんなにスピード出す必要ないし、そんなに長距離走る必要もないし、専用のシューズを履く必要もない。

「自転車文化」を語る向きの言説に影響されて、イオンバイクのような激安シティサイクルショップを、僕も少し嫌悪してたんだけど、いざ実際の店頭を見てみると、直感的と言うか本能的と言うか、そういう部分では「ええなああれ、1台欲しいな」と思っちゃう。なんなんだろうこの感覚、と思ってじっと考えてみたんだけど、これは、低価格のモノに惹かれるというよりは、社会に浸透させようとしているものに惹かれるんだろうな、と思った。僕はとても平均的日本人なので、たぶん、普通の人びとも同じような感覚なんじゃないのかな、と思う。

「自転車文化」を喧伝する人達は、1,2年前から始まった「ブーム」をけん引して、今まではロードバイク・クロスバイクをメインにして、今年はやたらとシクロクロスを推してくる。そうやって、新しいモノを紹介して、新しい高額消費を誘引する。けれど、だいたい、僕たちは、こういうのが一過性の「ブーム」だと、自転車に限らず、日本に住んでいると本能的に知っている。なぜなら、実際、今、「自転車文化」を喧伝している中で、数十年前にも自転車ブームがあって、その頃こういうのに乗っててねえ、という向きが、結局、そのブームが終わって最近のブームが起きるまで、バイクに乗り続けていない事実を知っているからだ。

定着しないものは、ブームであって文化ではない。それを承知で手を出す訳だから、価格は安いに越したことはない。そういう日本の特性を理解したメーカーは、その理解度が製品デザイン・設計に出ているんじゃないかなと思う。

「一生モノです」なんて言って売っていて、それが実際に一生モノだった現場を、日本で僕たちは恐らく見たことがないと思う。よほどの高額商品なら別だけど、そういう高額商品も文化ではあるけれど、それはその価格帯の世界の中では一定の時に耐えうる価値があるから文化と成り得ているのであって、4,5年で終わるならそれもまたただの「ブーム」。

なので、僕は、いわゆるスポーツバイクだけを偏重する胡散臭い「自転車文化」を奉る人びとよりも、イオンバイクのほうが自転車文化の育成に貢献してくれると思うようになった。ただ、それも、イオンバイクに勤めている店員さんのレベルと熱意があっての話。物凄い知識量はなくていいけれど、「たかが自転車」みたいなのが透けて見える店員が多いようなら、やっぱりイオンバイクもただの「激安」ショップで終わると思う。