『非属の才能』���山田玲司

非属の才能 (光文社新書)
光文社  2007-12-13

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 みんなと同じではなく、みんなと違うことが、これからの時代に求められる。みんなと違うこと、それを「非属」でるという。これが本書の主張。

 僕は、本書が言うところの「群れのルール」に慣らされてきた人間なので、「非属」である人に大きな才能が隠されているという主張は理解はできるんだけど、じゃあそれ以外の人たちはどのように振舞えばいいのか���とすぐに思ってしまう。特段の才能のない多くの人たちが「群れのルール」を守ることで秩序ある「社会」という基盤があり、それがあるからこそ、みんなと違う「非属」の人たちの才能が生きるのではないか、と。でもこの発想は、「非属であること���自分勝手」という決めつけが前提になっている。人と違うこと���傍若無人、ではない。人がそれぞれ思い思いのことをやると大変なことになる、と感じてしまう皮膚感覚それこそが「群れのルール」が染み付いている証拠で、人と違う感覚を持つことと自分勝手であることはイコールではない。実際、「非属」を謳う本書の著者でも、「自分の感覚で決めるのは大いに結構なのだが、自分が常に正しいかどうかはわからないという自覚だけは必要だ。」と書いている。この部分が峻別できないところが、日本社会の未熟なところなのかも知れない。

 「何が嬉しくてそんなことするんだ���」という言い回しは関西弁ではよく使われるが、「その変わっている部分が誰を幸せにするのか���という視点が欠けてしまっている」という本書の言葉は深く考えてしまう。変わっている部分があったとして、それをどう活かせば幸せになれるのか���自分にとって幸せとは何なのか���群れで大過なく過ごすことだけ考える社会だと、そんなこと考える意味さえない。そういう意味でも、「非属」という考え方には大きなアドバンテージがあるように思う。