『ルパンの消息』���横山秀夫

ルパンの消息 (光文社文庫)
光文社  2009-04-09

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 1985年作の著者処女作。最も印象に残るのは������������「あらゆる正論に耐性を身につけた化け物じみた犯罪者が次々と現れてくる」のくだり。確かに、僕が生まれ高校生までを過ごした昭和の後半というのは、融通が効かないというか効かせないというのか、明瞭なルールの下での公平を求めて、正論を正論として認めようという空気が少なくなかったのは事実だと思う。地域社会や家族のつながりさえも希薄になり、理解不足が進み、正論を押し通さなければならなくなった時代。それは「なあなあ」な「土着的」なもののネガティブな面を極端に毛嫌いした結果でもあると思うんだけど、その結果、本当に「融通」が全くない社会に突き進んでしまった感がある。すべてを正しいことで埋め尽くしてしまうのは間違いではもちろんないけれど、そうしようと思うのはなぜなのか何のためなのか、そういう視点を忘れてしまうから事態は悪化をたどるんだということに、いい加減気づかないといけない。