『別れのあと』���小手鞠るい

別れのあと
小手鞠 るい
新潮社  2009-01

by G-Tools

 「別れ」がテーマとなった短編集。長編だと思って買ったら、『別れのあと』『静かな湖畔の森の影』『婚約指輪』『この河の向こう岸』『はなむけの言葉』の5編の短編集だった。

 『別れのあと』の浜田修司の男っぽい嫉妬深さというのもよく理解できるけれど、この本で最も体に���頭というよりも体に���取り込まれていったのは『婚約指輪』と『この河の向こう岸』だった。『静かな湖畔の森の影』にもその要素はあるのだけれど、途中から方向が微妙に変わってるので、それほど印象に残ってない。それに対して『婚約指輪』と『この河の向こう岸』は、はっきりと印象に残る。誰かに遠慮してはいけないしする必要もないのだということ、わかってもらえないのは自分が悪い訳ではないのだということ、そして何よりも、僕は先を急いだほうがいいのだということを、不意に悟らされるような内容だった。そういう方法があるのだ、と。別れのあとには何も残らないのか���何も残らないのが別れということなのか���そういうことを結論に性急にならず前に進んでいかないといけない。

 小手鞠るいの作品は、登場人物が外国を行き来する話が比較的多い。この短編集もそうだが、これもまた僕に先を急がせる奇妙なセレンディピティだったように思う。わかってもらえなければ、それでいいのだ。

���������「あの頃、私たちの太陽は、いったいどのあたりに在ったのだろう」
���������「アメリカはわたしを解放してくれた。自由にしてくれた。」
������������「わたしはもう二度と、あなたを失うことがない、ということ。」
������������「俺らも同じものを頼むのが礼儀というものやないか。」
������������「そこから先には、不可能な行為というのは、ない。」