対岸の火事だと思っているのは誰だ

しかし、ウチの営業はいつになったら売ってくるようになるんだろう?担当してこの方、営業がドライブして成約に至った案件に出くわしたことがない。もちろん、小規模案件ならある。僕が言っているのは、僕たちが手掛けるべきサイズの案件のことだ。僕は今現在、ある程度僕の提案を信用して、あまり厳しい競合にさらさないで検討してくれる案件を提供してくださるお客様を、3社持っている。うち1社は担当変更で手放したけれど、これらのお客様と現在のような関係を築くのに掛かった時間は、1年前後だ。おまけに、それらの土台のあるお客様に対して、僕がフロントに立たないよう、なるべく後ろに下がって接するようにしている。なのに、この営業はいつまで経っても信頼が得られない。理由は簡単だ。その営業の存在価値が、ないからだ。出来あいの資料を持ってきたって、上司や上層部を連れてきたって、それがお客様にとって何のメリットがあるのか、組み立てられないようでは意味がないし、その営業本人のバリューって何?という話になる。人懐っこいかどうかという問題ではない。こんなに無愛想な僕でも、信頼は得られるのだ。確かに、僕はそれぞれのお客様に手数をかけている。でもそれは、営業がやるべき内容をやりきれないから、代わりに僕がやるから手数がかかるだけなのだ。そうして、僕のバリューが上がる。

 

いやいや、こんな批判を書きたかったんじゃない。仕事のことはあんまり書かないようにしてるつもり。今日書きたかったのは、もう一度、「想定外」についての話。でも今回は、「想定」する際の、話。

僕はシステム屋なので、「絶対に止まってはいけない」システムとか、「絶対に事故を起こしてはならない」と言われる会社様の仕事をさせてもらうことがある。そういう、「絶対にダメ」な会社の「絶対にダメ」なシステムは、いったいどういうふうに検討され、構築されているだろうか?

誰でも想像がつくと思うけど、少しでも安価にするためには、複数の業者で競争させることになるけど、競争させればさせるほど、なんか危なっかしいところが出てきそうな気がする。思わぬところで安い部品を使われたりとか。思わぬ作業工数をケチってカットしてるとか。出てくるのが三流の技術者とか。

かと言って、競争させない訳にもいかない。民間企業であれ公共体であれ、競争がないとぼったくられる。だから、普通は、RFP-提案依頼書というのを作成して、各業者に配布して、各業者はその仕様を満たすべく提案を作成する。そこに、「技術者は一流であること」(何が一流かって話はあるけど)と書いてあれば、三流の技術者を持っていくことはできない。

しかしこのRFPというのが曲者で、僕ら提案者側からすれば、このRFPに、いかに自社独自の製品や技術が盛り込まれているかが勝負を決めると判っている。ウチしかできないことがRFPに書いてあれば、ヨソはRFPをすべて満たすことはできなくなるからだ。かくして、通常、RFP作成前段階で、いかにお客様と会話を重ねられるか、という勝負になる。通常は、こういう争いを避けるために、「検討会」「公聴会」みたいなのを事前に開いて1年かけたり、RFIを出したりするんだけど、まあそんな悠長なスケジュールが組める会社ばかりではない。

で、「絶対にダメ」な会社の「絶対にダメ」なシステム担当者は、「絶対にダメ」なので、あまりにおかしいものを持ってこられたらやっぱり怖い。だから、過去に使ってきた業者や製品を変えたくない、という硬直性が絶対に発生する。そういう業者は、「絶対にダメ」なモノ用の部署とかを設置してたりもするので、過去に付き合いのある業者を変えなくて済むように、いろんなところで細工をする。

これは、決して間違ったことだとは思わない。でも、そこに「淀み」が発生するのもまた間違いない。その「淀み」が高じた結果起きたのが、今回の福島第一原発の事故が起きるような設備状態の放置に繋がったのだと、思わなくはない。