ビジネスの基本 再教育

案件が圧倒的に不利な局面で、どういうふうに行動するか。

いわゆるアメリカ資本主義的ビジネススタイルでは、かける労力と得られると予想されるリターンとの兼ね合いで行動を決定する。他方、日本的根性主義ビジネススタイルでは、とにかく結果が出るまでは諦めず食い下がれと発破をかけられる。

僕は結局、この両方に毒されていた。正しい行動は、このどちらでもない。

まず第一に、仮に失注したとして、結果が出た後、失注の理由を確認すること。お客様の決定には様々な理由があり、提案の是非だけでは残念ながらないので、教えてくださいと言っても本当のことを教えてもらえるかどうかはわからない。それどころか、こちらはお客様にとって断っている相手なのだから、本当のことを話してくれない確率の方が高い。それでも、その理由を教えてくださいと、お願いして訪問するべきだ。その理由は2点:①失敗の原因の情報を蓄えることは、今後の勝率を高める上で必要な情報②そのお客様との関係を重視する。特に関係を維持したいのであれば、態度で示さなければならない

次に、ほぼ絶望的な状況だとして、後は流れに任せるのか。これは、結論が出るまで諦めるべきではないが、「諦めるべきではない」ということが、どういう行動をすることなのかは、注意する必要がある。あくまで、よりお客様にとって有益になるように改善するために行動をするのであって、自分達の状況を有利にするための手を打つような行動であってはならない。同じようなことに聞こえるが全く違う。仮に、「御社の提案を聞くのはこれが最後です」と言われたとしても、どうしてもそのお客様から受注したいのであれば、改善余地があれば改善させてほしいという情熱を訴えてみるべきだ。有用性を高めるという理由であれば、お客様に納得して頂ける可能性はあるが、単に見積提示を差し替えさせてほしいという自社都合での行動は、敗因のひとつになるだけだ。

最後までやり切る、ということを誤解している人間に、毒されてしまっていた。効率的にビジネスをするという人間に、毒されてしまっていた。ビジネスの基本は、どれだけお客様に有用性を提供できるかであり、その核を無くしたビジネスが、長期間順調に進むことは絶対にない。

こんな基本的なことは、この年になると誰も改めて指摘してくれない。心底感謝するばかり。

アメリカ資本主義的ビジネススタイルも、日本的根性主義ビジネススタイルも、どっちも結局「うまいことやろう」という性根以外の何物でもない。そうしてもしなくても、うまいこと行くときもあれば行かないときもあるが、どうせそうなら、お客様にきちんと有用性を提案できるように、王道で活動するのが最もよいと改めて信じることが出来る。


自分の幅を広げるために、様々なところから情報を得たり、様々な場面に出向いたりしていたが、こういうことはすべてバランスなのかも知れないが、そういう間接的な場面で得たことが本業で生きると思っていたものの、そんなことよりまずやっぱり「本業」に集中することが改めて重要だと思い至った。お客様により多くの時間を割くこと。これがいちばん必要なことだ。