稲葉浩志作品展 シアン

「観に行った」という経験がじんわり後々力をくれそうな展示でした。

もちろん稲葉さんの作品展なので観たいなとは思うんだけど、稲葉さんのソロライブはいつまにか東京でしかやらなくなったし、Treasure Landも東京だし、今回のツアーも、コロナ禍で傷んだイベンターやその他にいろいろ配慮しないといけないんだろうけどそれにしてもファンクラブの抽選が酷いものだと思うし一方で5万人級の会場はファンクラブではないチケット販売サイトで申し込めば確実に当選するし、どうにもバランスを欠いているなと思って少し嫌気がさしていたので、この作品展も、正直作品集「シアン」からの言葉が展示されているのと、ちょっとオブジェみたいのがあるくらいだろうと冷めてみちゃってて行くつもりがなかったんだけど、NHKのニュースで取り上げられているのを見て気が変わり、東京出張の予定があったので、その前日を午後半休(午前は普通絶対に予定が入らない週次ミーティングの時間によりによってお客様zoomが入ったので休めず)にして東所沢まで行ってみることにした。

作品の展示については、稲葉さんの直筆の字が見れたり推敲の過程が見れたり、『ultra soul』がなにかの紙の裏に書かれてるみたでなんだろう?と目を凝らしてみたら『New Message』と書かれててリリース順どうだったっけ??と思ったりいろいろ楽しかった。作詞過程を見せてもらって思ったのは、稲葉さんでも最初は普通に普通のありきたりの言葉が出てきてるんだな、ということ。最初から磨き込まれた言葉が出てるのではなくて、書き直す中で通り一遍ではない表現になっていっている過程を見せてもらえたのは凄いことだった。まずアウトプットしていく、という当たり前のことを見せてもらえた。

後書きで「作品の過程を見せてしまったら歌詞の魔法が溶けてしまうのではないか、と怖かったけど、それならそれで、その先をまた楽しんでいこうと思う」というような言葉があり、感嘆してしまった。稲葉さんはコロナ禍になってから、ある意味ちょっと生き急ぐような感じでいろんなことにチャレンジしてて、作詞に関しても新しい境地をという魂は自分も少しでも近づきたい。

そして多分、展示の最初のほうだったと思うけど、「なぜ歌詞をまとめて作品にしようと思ったのか」について、「ひとつは単純に承認欲求」というような言葉が書かれてて、これには驚いた。直近で友人に「社会活動的なことをなぜするのか」と問われ、少し考えて「この年になっての存在証明的な承認欲求」と答えたのだけど、これを答えるのはかなり思い切りのいることだと思っていたのが、稲葉さんはさらりと答えていた。承認欲求にも両面があるということをこれほどクリアに伝えられる人はそうそういないと思う。自分も乱発はせず、成したいことのための承認欲求に素直に向き合っていきたい。