独走会 - 2015/12/27 伊賀上野 via 163号

年を取ると、昔見た景色の見え方をどうしても確かめたくなる時が来る。それが例え不吉な景色だとしても。

年の瀬慌ただしい最後の日曜、行先に選んだのは伊賀上野というよりも国道163号線。2年前の春の早朝、大河原駅を少し超えたところでトラックのサイドミラーに頭を撥ねられて以来、163号を走ったことがない。津に行ったり伊勢に行ったり蒲郡に行ったりしているけれど、163号を使ったことはあれから一度もない。もちろん、何度か走った道なので、方角が同じでも違う道を走ってみたいという気持ちがいちばん大きいけれど、ロードバイクに乗り始めの頃に走った道なので、辛かった記憶が濃くて敬遠勝ちになるのと、やっぱり事故の記憶からなんとはなしに及び腰になっていたというのは否めないと思う。

その臆病な己に克つというほど大げさな意気込みからじゃなくて、なぜかこの日走れると分かった時から、163号で三重に出たいという衝動が強かった。あの、大河原から島ケ原にかけての波状攻撃の登り。その先に開ける、学生時代を過ごした伊賀盆地。退屈極まりないコースと判っているけれど、ロードバイクを乗り出したあの頃の自分と何かが変わっているのかを確かめられるのか。

自分のイメージでは木津川を並走するあたりからが163号を走っているという感じなんだけど、生駒から伊賀上野だと木津川並走までに全行程の1/3が終わってる感じで、メインイベントは結構終盤ということになる。休憩ポイントの笠置キャンプ場前のコンビニまでは可もなく不可もなくで走って来れたけれど、その先がペースが伸びず、こんなんじゃあもう俺100km走ることなんて一生できないんじゃないかなあという思いが沸いてくる。休憩の笠置28km地点を出たのが走り始めから1時間30分後くらいだったので、この先に登りが3段待ち受けるのに、到着は何時頃になるだろうと重い気分になってくる。けれど、いつか自分に言い聞かせた「この先、万全で走れる日などもうやってこない。だから、走れていることに感謝しろ」という言葉をまた自分に言い聞かせて、走る。

最後の島ケ原の登り、辛い、辛い、と頭の中で繰り返すけれど、心拍は150bpm前後で8%強を登るときのいつもの心拍に較べれば全然緩やかなほう、足も太ももも痛くないし、呼吸も乱れてない、辛いと思っているのは頭の中だけで、ゆっくりでも回し続けることのできるコンディションだとこれも自分に言い聞かせ、何も考えずに丹念に回す。

走っていた時は判らなかったけれど、4年前の自分のデータと較べてみると、平均移動速度で6km違うし、トータルの所要時間もまったく違う。休憩も笠置の一回だけで、あとは少しも止まることもなく走り切った。今の自分にとっては自然なことだけれど、改めて4年前の景色と照らし合わせることで気づけることがあったんだなと、そしてあの恐怖心も克服することができたかなと振り返りながら、帰りは電車を4回も乗り換える輪行で2時間かけて帰宅。上野市駅で30分電車を待ったので、自走しても同じくらいの時間に帰れたかもな、と思いながら。