『サウスポイント』/よしもとばなな

どんなことにせよ、あまりに思い入れが強いとうまく行かないもんだという経験則があって、僕の目にはよしもとばななは凄くハワイが好きだと映っていて、その思い入れの強さがそのまま表れてるなあ、滲み出るというよりも隠すことなくそのまま出てるなあと、読みながらずっと感じてた。なので、他のばなな作品より、ストーリーよりも「ハワイの空気」みたいなところに心を寄せられるような小説だった。

よしもとばななの小説は、いつも「登場人物は正直に話す」その言葉の丁寧さにほとほと感心し、そして「時期が来るまで待つ」という、忍耐強い姿勢の大切さを再認識する。物事には、常に然るべきタイミングというのがあると思う。そのタイミングを逃してしまうのも自分の責任、だとは思うけれど、そう言い切るには現代経済の動きはあまりに苛烈すぎるようにも思う。その苛烈すぎる流れのなかで、自分はどういうタイミングで生きていくのか、いつもより少しだけ真剣に考えさせられた。

4122054621 サウスポイント (中公文庫)
よしもと ばなな
中央公論新社 2011-04-23

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