街の本屋で本を買う - 2014/07/02 ジュンク堂書店 近鉄あべのハルカス店 『Sunny 第1集~第4集』

これは手元に置いておきたい作品。よくよく考えて。

『Sunny』は松本大洋の半自伝的作品。「星の子学園」という「施設」を舞台にした物語。松本大洋の作品ってどれもなんというかステレオタイプというか、私のような昭和を経験してる団塊ジュニア世代にとっては「クサい」王道ストーリーをド正面からテレさせず読ませて感動させられるのですがこの『Sunny』は極めつけ。毒づいてるようで愛情のあるコテコテの大阪弁(がなぜ四日市で話されているのかという疑問もちょっとあるけれど)のセリフ回しに何度も泣かされそうになります。

星の子学園の園長先生も保護者代わりの立場の先生足立さんも、星の子に凄く親身に接している。星の子は自分たちで星の子学園の子ではない、一般家庭の子のことを「ウチの子」と言って区別している。そんな星の子が界隈で万引きやらの悪さをしても、足立さんは必死になってお店に詫びる。そこでお店のほうも「この子らもいろいろ事情があるってウチらもわかってるから、これでも大目に見てるんですからな…」というようなやりとりがある。私は、「事情があること」を、星の子本人たちも、星の子学園の人たちも、さらに近所の人たちも、皆が普通に認めて生きているこの『Sunny』の世界が素晴らしいと思う。そして、確かに自分たちが子供の頃は、こういう世界が成り立っていたような気がして、園長先生や足立さんは、もはやボランティアかというくらいの生活ではないかと見えるのに、確かに昔はこれが成り立っていたと思うし、現代では成り立たないから見かけなくなったのだと考えると、つまり園長先生や足立さんのような「役割」で生きていくには現代社会は生活コストが掛かり過ぎる社会なのだと思った。昔は、こういった「善意」(というと園長先生にも足立さんにも起こられそうだけど敢えて)の役割を果たしてくれている人が社会にいれるだけの低コストな社会だったのだ。

今は何でも金、コスト。星の子学園のような施設を行政で準備するとしたら、それにいったいどれだけの税金がかかるのかとか人件費がとか、そもそも親の責任だろうとかそんな話ばかりになる。なんとなれば刑務所ですら人権とコストで大変なことになっている。でもほんとうにその角度で考えることが、すみよいコストの社会になるのか?そんなことまで、『Sunny』は考えさせてくれる。

だからこの『Sunny』だけはどうしてもamazonではなくて実店舗で買いたくて、どこがいいだろう?と考えて、雰囲気と機会で決めようと考えたら、行ったことのなかったハルカスを思いついて。『Sunny』の舞台は四日市だけど、天王寺って凄く雰囲気だし。ということでハルカスのジュンクに行ったら、最新刊だけ在庫なかった。これはまた来いってことかな。

4091885578 Sunny 第1集 (IKKI COMIX)
松本 大洋
小学館 2011-08-30

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