クラウドファンディングとサスティナビリティとアート

前から、クラウドファンディングについてきちんと考えようと思っていました。クラウドファンディングとは、wikipediaによると、

クラウドファンディング(英語:crowd funding)とは、不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指す、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語である。

となっています。大雑把に言うと「インターネットを使って幅広く事業資金を調達すること」で、その特徴は小口出資が主体で、ベンチャー的に個人で起業する人にとって有力な資金調達手段であり得ることだと言えると思います。

数か月前、このクラウドファンディングのことを、「素晴らしい事業を行っていれば、インターネット上で世界中から報酬を支払ってくれる人を集められる、素晴らしい仕組みだ」と書いているブログを読んで、「何を寝言を言ってるんだ」と思ったのがクラウドファンディングについて考え込むきっかけでした。

クラウドファンディングは、文字通り「ファンディング」です。「報酬」ではない。これから何かを始めたい、だけれでもその元手がない、銀行に出資を願うほど多額も要らないしそこまでの信用力もない、そういう「企業家」が、自分の事業計画をネット上で公表して、ネット上の不特定多数に出資を募る。つまり、クラウドファンディングで調達したお金は「出資」ですから、「償還」しなければならない。利子つけて返さないといけない訳です。

では私はクラウドファンディングのサイトを見て、「これは」と興味をひかれた、おもしろそうな事業に出資するだろうか?答えはノーです。その理由は、今見聞する限り、投資に見合うリターンのある案件は存在しないからです。

クラウドファンディングの出資者に対するリターンは、聞くところによるとほとんどがその事業で生み出される成果物みたいです。たとえば10,000円出資して、よくわからない発明品が手に入ってもしようがない。これは、儲けたいか儲けたくないか、ということとは違います。これがはっきりと「寄付を募る」というのだったら、興味をひかれたおもしろげな案件に、喜んでお金を出すと思います。「ファンディング」と名乗っているのにこれだから、出資する気にならないのです。

銀行の融資の仕組も、株式会社の仕組も、経済活動上その必要性があるからああいう形態になっている訳です。その多くは「信用」に関わるところだと思います。だから、融資の仕組も株式の仕組も長続きしている。でははたして、クラウドファンディングの仕組が長続きするか?今のところ、日本では私はノーだと思います。物珍しいから面白がってお金を出している人が多くいるうちは続くと思いますが、面白がって出すお金には限度があります。それに面白がる鮮度も限度があります。おまけに、そうそう面白い案件が出てくることはないですし、真に面白い案件であれば銀行から出資を受けることもできるはずです。そう考えると、リスクは高いのに満足なリターンのないクラウドファンディングが続けば、そこにサスティナビリティがあるかないかは明白なように思います。

このクラウドファンディングをアートに応用している活動もいくつかあるようですが、出資が必要なアート活動というのはどういうものなのか考えてみました。例えば映画を創る。そのための資金が必要である。ならばその調達資金は当然、上映の売上から返すべきお金になる。こういうことならわかる。しかし、調達したお金は芸術家の食い扶持で、出資に対するリターンは展示会のチケット。こういうのはおそらく続かないと思う。なぜならチケットを買う方が早いし、それのほうが断然全うだから。まず努力するべきは、アウトプットに対する対価を得られるように努力することで、出資を得ようとすることではないと思います。

だから、クラウドファンディングにも寄付型があって、寄付型であれば私は納得できると思います。この筋はきちんと通すべき筋ではないかなと覆います。