『日本人のためのピケティ入門』/池田信夫

どこがいちばん問題意識として頭に残るかって「ストックに対する累進課税」、ここでした。言われてみると、と思って読書記録手繰ってみると、「ストックへの課税強化」をこれからの課題として上げている書籍がやっぱり複数あった。

稼いだおカネは貯めずにぱーっと使いなさい、という世の中を目指すような感じがして、従来の道徳観と合わずに若干躊躇するかも知れないけれど、格差拡大の元凶がそこなのだとすればこの転回は早く受け入れなければいけないことなんだろうと思う。それに、おカネをじゃぶつかせれば景気がよくなるんですという言説が本当だとすれば、富裕層に対してストックさせずにどんどん消費させる政策が間違っているはずがない。

しばらく前、「貯蓄から投資へ」みたいな喧伝がなされた時期があったけれど、あれは結局、証券の持ち手が、売り先がなくなり商売が行き詰まったのでカモの買い手を求めて繰り広げられた一大キャンペーンみたいなものと思っていて、だから「投資」とは言っても、純粋に事業に資金が巡る効果よりも資産としての証券を持っている人が売却(と更なる購入とのサイクル)で利益を維持していっただけだと思ってる。

一方で、その「証券を持っている」側の人なんかは、『ヤバい日本経済』のように、「不動産価格の回復が必要」みたいに、ストック擁護になっていてある意味おもしろい。

今回は相続税もテコ入れされているし、ストックに対する課税強化という方向に進むのかなと見えても、直感的には今現在巨大なストックを持っている層が、そう簡単にその政策を実現させるとは思えない。基本、ストックを持っている層が、政治においても大きな力を持つのは現実。なので、これはやっぱり「革命」が必要なことなんだろうなあと思う。

4492444149 日本人のためのピケティ入門: 60分でわかる『21世紀の資本』のポイント
池田 信夫
東洋経済新報社 2014-12-12

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