市長選に際して② 生駒市立病院建設問題

今回の生駒市長選を考える際、絶対に避けて通れないのが市立病院建設問題。

市長選を前にするまでもなく、市立病院建設に関して関心があまりない生駒市民は少ないのではないかと思います。2005年に市立生駒総合病院が閉院して以来、総合病院建設は生駒市政の重要テーマの一つであり続けました。生駒総合病院が閉院する、ということを知った際、総合病院がなくなるなんて、という漠然とした不安を覚えました。しかしながら、それから8年、大きな病気をしていないとは言え、総合病院がなくなったことで何か不都合があったか、と言われると、そうでもないな、という感覚があるのも事実。生駒市には近大奈良病院、倉病院、阪奈中央病院等々の総合病院があるし、県立奈良病院にも車で20分程度で行ける。一体何のために、市立の総合病院が必要なのか?というぼんやりとした疑問はずっと抱いていたと思います。

そこでまず市立の総合病院を必要とするポイントを調べてみたのですが、生駒市のHPでは一目でそれが判る内容はありませんでした。ネットで調べてみると、まず最初に見つかるサイトの中で最もよく纏まっていたのは東洋経済オンラインの記事でした:

足りないのは、「救急医療と小児科、小児救急医療が課題」(生駒市議会関係者

これは確かにその通りだと思います。救急医療は奈良県全域で課題に挙げられ取り組んできている課題ですし、小児科に限らず対子ども政策に関しても一層の充実が必要、という状況です。もうひとつ言えば、対子ども政策が他の市町村に比べて見劣りする理由はおそらく一にも二にも財政上の理由で、高齢者を優遇して更に財政を逼迫させて子ども政策が更に貧弱になるような、生駒の未来を潰してしまう、国民健康保険税引き下げを公約に掲げる候補には断じて投票できません。

総合病院の必要性という視点ともう一つ、避けて通れないのは指定管理者が「徳洲会」であることの是非とその経緯です。まず経緯については、公募期間が2週間という短さだったという点が疑問点になります。この時点でめぼしい候補者が不参加になっている中で、2週間の公募期間でどれだけの団体に情報が行き届くのか、という疑問がありますが、それでも市立総合病院が必要不可欠という状況であれば認められるでしょうが、先に書いたように、総合病院というよりは救急医療と小児医療が課題。確かに徳洲会病院は救急車受入件数が国全体の3%という規模ですが、この数字だけで、徳洲会病院が救急受入に積極的か、また救急医療を得意としているかどうかは判断し辛いです。病院数が多ければ、自ずと割合もあがると思われるからです。よって、この視点で言うと、同じ予算を掛けた場合、市立総合病院の建設と、既設病院に対して救急医療を請け負う際の補助とで、どちらがより費用対効果が高いか、という視点から判断せざるを得ないと思います。

もうひとつ、「徳洲会」の指定管理者としての適性性という視点があります。徳洲会は徳田毅衆議院議員の関わる公職選挙法違反事件で捜査を受けている状況です。毅議員が受け継いだ地盤を築いた、父親の徳田虎雄前理事長は自身の選挙戦時に、「カネが乱れ飛んだ」と平然と記事で書き記されるほどの選挙戦を実施してきたようです。生駒市の広報誌では、

この「適性性」は、市立病院の運営を委ねるものである以上、基本的に病院運営や医療行為について判断すべきものです。

とあるのですが、虎雄氏は病院運営にあたり政治も必要と考えたからこそ出馬したのであって、徳洲会にあっては病院運営・医療行為に政治は必要不可欠なものであったと考えるのが妥当だろうと思います。公職選挙法違反の有無はさておいても、理事長が国会議員であることにより病院運営にプラスの効果があったことを否定するものではないと思いますし、公職選挙法違反容疑に限って言えば、対価を支払って病院関係者を選挙対策に借り出していた訳ですから、病院運営と政治活動は不可分であったと見做すのが自然だと思います。

そうした場合、公職選挙法違反容疑で逮捕者が出ている状況で、病院運営に支障を来さないのかと言うと、これは徳洲会と取引のある会社なら誰しもわかることだと思いますが、某かの滞りは確実に出ている状況です。プロジェクトが一括して一時凍結になったような例は少なくないと思います。その結果、徳洲会全体での資金フローがどのようになっているのかまでは調べられませんが、最新号の広報誌では、徳洲会と基本協定書が締結できたという文言はありません。最悪の場合、徳洲会側の都合によって、白紙撤回される可能性だってまだあると思われます。

この問題は考えるのが非常に難しく、市立総合病院の必要性を鑑みると、市側は引くに引けなくなって、適性性についても強弁しているような印象が拭えないのですが、判断基準としては現状ではやはり、「徳洲会が最悪でも現状の条件のままで市立総合病院を運営していくことをコミットするか、コミットさせることを公約できるか」ということになると思います。市が負担する借地料年間5,400万円を異なる使徒に支出した場合の効果と合わせて考えることになるかと思います。この課題は、病院建設中止、で済む課題ではないので、単に「建設中止」を掲げるだけの候補者に対する評価はやはり低くならざるを得ません。