『天使は見えないから、描かない』島本理生

世間に認められない状況というのはLGBTQ+に限ったことではない。これがLGBTQ+の話だったら読み手の想像力の働き方が一段単純になるところだけど、そうではない状況で組み立てられているところに惹きつけられて一気に読んだ。周囲に絶対理解されないということと、理解だけではなく法律的にも自然の摂理的にもNGであることは別のことで、主人公の立場はその両方にある。そして主人公はいわゆる「強い」女性であり弁護士であり、自分の強さに対するそれまでの周囲の「無理解」に対する不満が、自分自身が周囲に対して(身内に対しても)見える範囲で判断していたという「無理解」に気づくことが起こり、第3篇の「ハッピーエンド」につながる。「ハッピーエンド」という章タイトルを見たとき、不穏な印象を受けるけれど、その不穏さがどこまであたっていてどこまで間違っているかも、自分が何をどこまで見ているのかの物差しになるような気がした。

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