街の本屋で本を買う - 2014/08/05 啓林堂書店生駒店 『ITビジネスの原理』/尾原和啓

啓林堂書店生駒店の出来はともかく、『ITビジネスの原理』は古臭いタイプの本でした。読む必要ないと思います。

私はビジネス書類を、著者が有名かどうかや有名企業の関係者かなどで購入することがほとんどないんですが、『ITビジネスの原理』というタイトルと、マッキンゼー・ドコモ・Googleそして楽天に転職したという著者の経歴をカバーで見て、偶にはそういった先駆者からの情報を取り入れるのもよいのではないかと思い購入してみたのですが、残念ながら、IT業界に身をおいている人間にとってはハズレと言っていいと思います。本としてのフォーマットが古臭いのです。まず業界のトレンドと歴史を多少の「トリビア」的な事柄を織り交ぜながら要領よく(でもこれだけで全体の三分の二くらい使う)説明し、整っているが故にある程度の説得力があると読者に思わせられた頃合いで自分がこの著作で世に広めたかった言説(イコール今後の自分の仕事がやりやすくなるよう世間に浸透させるための言説)を開陳し、最後に「そしてITは人を幸福にする道具へ」というような、「歴史の最終形態が、私のこのアイデアで実現する」的な希望を撒いて終わる。この手のフォーマットの書物が「自分にとって」大して訳に立たないのは自明なのです。そこにあるのは「著者が流布したい言説」なのだから。

具体的に言うと、

  • 著者は「ハイコンテクストがやりたくて」楽天入りした訳だが、楽天が出資している事実に特に触れず、pinterestを「ハイコンテクストなコミュニケーション」としてさらっと紹介している
  • 「ハイコンテクストが最終形」であるかのような誘導がある。実際には、ハイコンテクストとローコンテクストは揺り戻しを繰り返しながら進むものだ。なぜならローコンテクストを必要とする社会や経済や欲望は確かにあるからだ。

結局、本著は「楽天」のイメージアップを意図した内容でしかないと(少なくともITバックグラウンドの人間にとっては)思います。『ITビジネスの原理』と言うほど大仰な内容ではありません。もう少し収益構造などに踏み込んだ内容かと思いましたが残念です。啓林堂の書棚で本著と並んでいた『まいにち見るのに意外と知らない IT企業が儲かる仕組み』と悩んで本著にしたんですが、あちらにすればよかったと後悔です。

ところで啓林堂書店生駒店ですが、駅前図書室も出来、生駒駅界隈の書籍環境が劇的に向上していく中、心配なのはジャパブです。真弓のジャパブも閉店したそうですし。とりあえずジャパブは置いておいて本書店ですが、もちろん悪くはないのですが:

  • あのサイズだと、意外と欲しい書籍がない確率が低くないと思う。一定の面積を占めているので、賃料を考えると売れ筋本を多く置かなければいけないのだと思うけど、そうすると、若干旬を過ぎている本とか、無名ではないけれど本屋が取り上げるような本かなーというような欲しい本があるのかどうか、探すのが結構たいへん。あのサイズの店にこそ、検索機が必要な気がする。
  • レジが高い!あれじゃあおカネのやりとりしにくい人がけっこういる気がする。
  • 自分の好みだけで言えば、特集棚の本はあんまり惹かれなかった。

ちょっとカラーを出しあぐねているところがあるような気がします。近鉄生駒の客層って結構わかりやすいと思うので、思い切ってターゲットを絞った展開にして特徴を出したほうがいいように思いました。