"開戦する潔さがない?"(『苦悩の果てのそれも答えのひとつ』)

ドハマリ中です『CHUBBY GROOVE』。発売前に曲名一覧見て一発で気になると思いつつその気持ちを抑えたんだけど目下このアルバムはこれがいちばん。
    

稲葉の「恋愛をモチーフにして社会的なことを言う」歌詞の真骨頂。出だしが

死んでも手に入れたい
そんなものないんだな
残念だけどこの頃
つくづくそう思うよ

で、「あーすごく夢中になるような何かを見つけることができない、残念な自分みたいだなー」という解釈で感情移入しかけたところに

開戦する潔さがない?
手を挙げる大胆さもない?
弱虫でしょうか?

ですよ。参ったね。まさか安全保障に於ける、もっと言えば憲法に於ける日本の立場を織り込んだ歌詞です。「海戦する潔さがない?」と、「開戦」という言葉を入れているから間違いない。だから、出だしの「死んでも手に入れたい そんなものないんだな」も、命を懸けてまで戦う理由なんてないんだ、ということを婉曲的に言っていると読めます。過去に「大量破壊兵器」という言葉を歌詞に入れた稲葉ならではの歌詞。開戦も無条件に従うでもなく対応していくことを否定はしないこの歌詞。開戦する潔さも手を挙げる大胆さも、結局自分たちが傷の付かないアクションならなんでもいいと思ってるんじゃないでしょうか。

”自分勝手ならごめんなさい”(AISHI-AISARE)

明後日あたりにはCD届くだろうというのにこれだけのためにdヒッツ申し込もうとしたくらいだった(実際はdヒッツはダウンロード未対応とわかったのでそれならyoutubeでもいいやと思ってやめた)。

"BLACK COFFEE"と同じようなこの苛まれ感。この歌詞は、そこまで深刻なことを歌っている訳じゃないとくらいは読み取る力は僕にもある。出だしで

喜怒哀楽とか天井シラズ
たまにキズ 言葉が暴走して
取り返しがつかなくなる

と言ってるんだから、これは相性抜群平穏なふたりの”言い過ぎ”ケンカ程度がモチーフの歌詞だ。それを思いっきり80年代歌謡ロック風にして不釣り合いに情感たっぷりにしている、そのアンバランスさが面白い曲だ。とはわかってる。わかってるけど、

無我夢中で取り戻したい

やっぱりここ。続く歌詞が

春の陽のように優しい感触

なので、相手を失っている訳ではなくて相手との仲直りを”取り戻したい”と言っていると思うけれど、僕にはここはそれ以上に響く。なぜなら、その前に

自分勝手ならごめんなさい

という一節があるからだ。言葉が過ぎたケンカの仲直りで”自分勝手”は普通ない。相手も言葉が過ぎていて、両方仲直りしたいと思っているはずだ。それを”自分勝手ならごめんなさい”というということは、自分のほうが悪いと思う何かが頭の中にあって言っているシチュエーションが浮かぶ。そしてその取り戻したいと思うものを”春の陽のように”と、季節のような長いスパンの言葉を持ち出してくるところに、長い時間の中で失われてしまった優しい感触の”何か”を思い浮かべずにはおれない。

これは長く一緒にいる中で、馴れなのか惰性なのかでずるずると失ってしまった、付き合って間もないころの初々しい、すべてに優しい気持ちを持つことのできる自分を取り戻したい、と歌っている歌に違いないと僕は思う。それを失ってしまったのは自分の心掛けの悪さなのに、それを取り戻したいというのは、”自分勝手”と自覚があるのだ。そして、”自分勝手”と思うのは、春の陽のように優しい感触は、自分だけでは取り戻せないとわかっているからだ。自分の心掛けの悪さで、相手もそれを失ってしまっていたら、自分だけが取り戻しても二人の間では優しい感触は帰ってこない。だから、自分勝手だけど取り戻したい、と言っているのだ。

そしてこの曲がそこまで大仰なことを言おうとしているというのは、二番のここでも伺える:

欲しい物見つけたら
がむしゃらに突き進む
必死の思いで 手に入れた宝が
いつしか重くのしかかる

そして、優しい感触は、春だけではなく、夏も秋も、反語のように引用されてるのに、冬はない。

春の陽のように優しい
夏の雨のように優しい
秋の予感のように優しい
ゆずれない感触

『YELLOW』/稲葉浩志

つくづく、自分の青春時代からずっと、同時代を生きてる近い世代のアーティストが現役でい続けてくれることのありがたさを再確認。

少し疲れ気味になると耳の奥頭の底でフェードインしてくる昔の曲。なんという言葉でもってその郷愁を言えばいいのかわからないくらいの郷愁が同時に沸き上がる感じ。もちろんその時に帰ることはできないから、郷愁を胸の中で千切れるまで掻き毟るしかない。そんなふうなことを折につけ吐露していたら、この曲だ。

”むせかえるような砂浜で
繰り返し流れていた歌が
この細い腕をつかんで
連れ戻してくれる
穢れなど知らぬ頃の自分に"
"もうそこには帰れない
寂しさ嚙み締め叫びます"

これに魂を鷲掴みにされ、ここまでシンクロしたら堪らんなあと思ってたら、こう来る:

”他人の哀しみなど
分からなくても泣いてみせる"

せせら笑われているようなこの感じ!

それでも、全編通じて振り返っては悔やむばっかり、”全部チャラにしてくれ”と太陽に願うくらいの心情が、最後のサビで一気に急展開して、

”全部チャラにしなくてもいい”
”もうどこにも帰らない
何も怖くないと叫びます”

結論的にはこれしかなくて、すでに"パーフェクトライフ"で提示されているモチーフなんだけど、”パーフェクトライフ”と違って、恋愛軸がぜんぜん入ってない分、中年男が抱く”ここまで来てしまった感”を突破するエネルギーがダイレクト。最後のサビはほんとにコンパクトで、内容的には比較的軽いものなんだけど、そのシンプルさこそが中年が前を向くために必要なものなのだ。厚顔無恥にはやっていけない生真面目さが残ってしまう中年が前を向くためには。そこはシンクロしているに違いないと思う。

ちなみに(今のところ)配信限定です。

『BASIN TECHNO』/岡崎体育

書きたいのは『スペツナズ』。『MUSIC VIDEO』は俄かファンが書かなくてもいいでしょう。

『VOICE OF HEART』をなんで普通にやりきる曲にしなかったのか、AメロとかBメロとかメタネタは『Explain』でも『MUSIC VIDEO』でもやってるし、せっかく切ない系歌謡テクノなのに2番からコミックソング的になるのが若干残念というか、アルバム中に1曲マジメにやりきってる曲を入れてバランスとるのは昭和世代の感覚で、平成世代はやるなら全部おもろいテイストじゃないと、どの曲だけつままれるかわからないし、ということなのか、とか思ってちょっとGoogleにかけてみたら、妄キャリとの2マンで2番の歌詞を忘れて飛ばしてしまうという、正にこの収録と同じ展開があったことを知り、それを再現してるのかこの収録は、とか思ったんだけど、それもこれも『スペツナズ』で吹き飛ばされる。

もう信じられないくらい強烈に吹っ飛ばされる。

写真を抱いた泣きじゃくる老婆
待ち望んだ言葉はいつも「ただいま」
(『スペツナズ』/岡崎体育)

『スペツナズ』は最後までやりきられる。『スペツナズ』の意味を、もし知らなければGoogleで調べてから、ぜひ聴いてほしいです。『スペツナズ』を混じりけなしにリスナーの胸に聴かせるために、『VOICE OF HEART』で照れておいた、と思ってもあながち間違いじゃないと思う。

B01DIB2RM6 BASIN TECHNO
岡崎体育
SME 2016-05-17

by G-Tools

B'z "B'z LIVE-GYM 2015 EPIC NIGHT" 2015/07/05@京セラドーム大阪

稲葉さんがMCで言った「気持ちが大事だからね、気持ち」これに尽きます。
(ネタバレします)

すっかり生活が変わり、ライブの感想も1週間遅れが精一杯だし、早めに会場に来て雰囲気を楽しむこともなければライブの前に徹底的に予習することもない、だから"NO EXCUSE"で”重々!”をやり忘れたり、でも楽しみ方が変わってもLIVE-GYMはLIVE-GYMでした。本編でアルバムチューンをすべてやってくれたのは何かの思し召しだと信じたいくらい。本当に本編を楽しめるだけで十分でアンコールは飛ばして家路に着いたのだけれど、まるで生活が変わればそういうこともあると言わんばかりに、アルバムチューンはすべて本編で聴けたのでした。

"BLACK COFFEE"に燃え上っていたのはアリーナ10列目付近というコアなファンばかりと思われるエリアでも僕だけでしたが、過去のタイトルの胸を抉ってくる選曲の凄いこと。"YOU&I""Don't Leave Me""Blue Sunshine"って。”きっと良かったんだろう僕たちは巡り合えて””似たようなことを何度繰り返して一体どこに辿り着けるの””わかりあうことの難しさを思い知る”ー泣かすじゃないですか。

でまあ”Ultra Soul"はやるよなあ、と一通り盛り上がって、いっつも思うけど続けて”スイマーよ!!"やればいいのに、と思ってたら"スイマーよ!!"ですよ!セットリスト全く見ず行ったのでびっくりでした。アリーナ10列目付近というコア(後略)でも、往年のクロールを模したフリをやってたのは僕だけで、この曲で一体オーディエンスがどこまで盛り上がれたのかちょっと不安でしたが、”魔法じゃない じゃないけどできるよ”はやっぱり泣けるのでした。

この先あとどれくらいライブを観れるのか楽しめるのかわかりませんが、観れても観れなくても悔いのないように、今まで成長のためのエネルギーをくれ続けてきたB'zに失礼のないように、熱心に生きていこうと改めて思ったライブでした。"EPIC DAY"のことを”いちばんまったりとしたアルバム”なんて書いてごめんなさい。あれは尋常じゃないエネルギーが炸裂しているアルバムです。

”そんな運命 シブい運命”(Black Coffee)

今までで一番、飛びぬけてまったりした印象でした。成熟した"IN THE LIFE"という感じ。あまりに崇高な思想を歌われたりはしないけれど、だから生活に密着して聴けるけど、成熟感は抜かせない。

全体を通すと、"EPIC DAY"というタイトルの意味をよく理解できます。やっぱり大事なのは、"EPIC DAYなんて来るのか来ないのか分からないけれど、来るように日々行動するということ”という了解の仕方。B'zは決して、単純に"いつかEPIC DAYが来ます”とだけ、言ってる訳ではない。"MAGIC"で”ひたすら信じて待て”と歌ったけれどあれも決して単純に報われることを保障してる訳じゃない。"EPIC DAY"に戻って、このアルバムは、ここまで来てしまったという現実とか(”Exit To The Sun"の「微笑んでくれる人がひとりいるなら もうそれでいいじゃないかってうなずかなきゃいけないね」)、やり直せない現実とか(”Classmate")、そういう「年をとった」現実を正面から受け止めて、そこに安住せずもっともっと先へ生きていこう、というふうに受け取ります。

全体を通すとそういう風に受け取れるながらも、魂を鷲掴みにされ一度聴いてからずっと頭の中で考えが四方八方に伸びて収まらず、どうしてもそれについて書きたくなってしまうのが”Black Coffee"。"Classmate"とか、内容的には哀しいテーマであっても曲の印象も歌われていることもきつい伝わり方はしてこない中、まるで鈍器と鋭利な刃物の両方で感情に大ダメージを与えてくるような曲。

明日になったら何か変わるでしょうか
くだらない誤解を笑うような
氷がちょっとずつ解けるような
そんな夢 甘い夢
ノミホソウ

「ノミホソウ」。そんなこと有り得ないよ、と諦めさせられる。だいたい世の中では意見を交わせば通じ合える、という理想を掲げる中で、「そんなのただの楽観的希望的観測でしかない」と突き放す「ノミホソウ」。

お互いいろんなものを
見せ合ったけど
まるごと愛せる才能がまだ足りない

時間をかけ相互理解が深まると、もちろん受け入れられない部分や、経験して記憶に残ってしまう否定的な部分が積み重なる。だから時間をかければかけるほど、そういった受け入れられない部分を受け入れる力が必要になるけれど、それが「まだ足りない」と、自分を責める方向に向かうしかないネガティブスパイラル。

誰のことも恨まないで憎まないで
優しい思い出だけ集め
このままさよならしてしまおう
そんな思い 苦い思い
ノミホソウ

そして出口を無くしてしまうこの曲最大の大転換。日本では(世界でもそうなのかも知れないけれど)、耐えきれないことがあったとき、それを自分の外部のせいにせず、不平不満も言わず、感謝すべきことに感謝だけをして、潔く身を引く的なスタンスが美徳とされ、それをわかっていてその選択肢を選ぶことが時に「楽」なこともあって、そうやって楽なほうに逃げてしまう自分を「苦い思い」で見つめてその考えすら「ノミホソウ」と言われてしまう。どん詰まりの状況で、ただ黙ってそこから立ち去ることさえ許されない。

正直な思いを残らずぶつけあい
悔いが残るほど傷つけあい
それでも少し前に進む
そんな運命 シブい運命
まだ見ぬ旅路があるのなら
しばらく歩いてみるのもいい
出発の前にもう一杯だけ
黒い珈琲 苦い珈琲
ノミホソウ

たった一か所だけ出てくる救い、それが「それでも少し前に進む」。そしてそれを「そんな運命 シブい運命」と呼び習わす。先のフレーズで「このままさよならしてしま」うことを「ノミホソウ」と言っているので、意見が徹底的に食い違う相手と、それでも離れることはしないということは前提になっていると思う。離れることはできないからズタズタになるほどやりあって、それでやっとなんとか「少し前に進む」。そんな状況を、「そんな運命 シブい運命」と言わずに何と言えよう。それでも少し前に進んでその先に「また見ぬ旅路がある」と思えるから「しばらく歩いてみる」。「しばらく」と言い、「してみるのもいい」と言っているけれど、これはもうそうやって生きていくしかない、それが人生という運命なんだと言っているように聞こえる。

自分にとっては”有頂天”は久し振りに投げ出されるだけの救いのない歌詞だなあと思ってて、この"Black Coffee"も相当にどん詰まり感のある苦く重く苦しい歌詞だけど、"EPIC DAYなんて来るのかどうか分からないけれど”という境地を維持するためには、これくらい徹底的に自分を追い込む覚悟がないといけないんだなと深く深く突き刺さった。例によって単純な男女間のことを歌っている曲ではないし、自分が自分の生活に照らし合わせる際も自分の生活というより自分のスタンスすべてに染み渡らせようと考える内容だった。

B00SQEGZ42 EPIC DAY (通常盤)
B'z
バーミリオンレコード 2015-03-03

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『MOONDUST』/the pillows

”僕は後どれくらい キミと会えるだろう"

(『MOONDUST』/the pillows)

同世代のアーティストが現役でやり続けてくれるというのは本当にありがたいことだと思います。35歳になったとき、70歳まで生きれるとして人生半分過ぎたんだなあと思ったときの寂寥感なんてまがい物だったと思うくらい、42歳の今、人生の残り時間はどのくらいなんだろうと思う真剣さは鋭い。いろんなことの残り時間が少なくなっていて、あと何回できるんだろうという事態に陥っていて、この真剣さを分かち合えない世界のもどかしさにもんどりうっている。

残り時間が少なくなって年を取って忙しくなって時間をかけるところも興味の対象も情熱の質も中身も変わり、好きなバンドの新譜のタイトルが青いカーネーションのことを指していてその花言葉が「永遠」だから今の自分たちに相応しいと思ってなんて由来を調べることもしなくなり、20周年のときは武道館まで行ったけど25周年の今、どんな記念イベントが開催されているのか全然知らなかったり。

だけどそれはそういうもんなんだろうと最近では認められるようになってきている。決してそれは老いではないし後退ではない。たとえどんなに理解を得れない世界に住んでいたとしても、腐らずに成熟していく道を歩まないといけない。知ったことが多い分だけ、できることも増やせるはずだ。仮に残り時間がなくなってしまったとしても。稀有なアルバムでした。

"The Last Period 
破れかけた飛行船で行こうぜ"

(『Clean Slate Revolution』/the pillows)


B00MUP8IVQ ムーンダスト (CD+DVD)
the pillows
avex trax 2014-10-21

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『Hurt』/syrup16g

初めて聴いたシロップは802でヘビーローテーションだった"Reborn"。


"DELAYED"聴いて"HELL SEE"聴いて"Mouth to Mouse"聴いて。"HELL SEE"の"吐く血"で完全にすぶすぶでした。人生いいことばっかじゃないというのが真理というような、冷めたというか拗ねたというか高校卒業とともにバブル崩壊した世代によくある人生観を頑なに守っていた人間にはぴったりフィットして。わざわざ、人生の暗い部分、どうにもならない部分に浸りたがるというか嵌りたがるというか、そういうのがあるんだからそこから目を背けたらダメ、それは逃げだ、というようなスタンスで。

けれどいつからかいつの間にかそういう感受性も流石に衰えて、「わざわざ目を向けなくったってそういう辛いことは起きるんだから、今起きていない状況に素直に感謝していいことだけを考えて生きるほうが建設的」「いいことだけに目を向けて生きるほうが、いいことが起きる状況を引き寄せる」という考え方にだんだん靡いて、そうするとシロップのような、否定しきれないダメ部分をこれでもかとぶつけてくるような音楽を聴いてそこにどっぷりはまっていくのに怖気づいてしまって。入ってしまうと戻ってこれないような、あのどっぷり感は抗いがたい魅力があるけれどあるが故に近づいてしまうことに怖れもあって。

だから"Hurt"のリリースを知ったとき、”聴きたい!”というのと同時に”怖い!”という気持ちも湧き上がって相当躊躇した。けれど結局抗いきれず買った。買ったけど聴くのに一週間かかった。そして聴いた。

確かにいろんなレビューで書かれてたように、かつてのシロップのような破壊力がないような気がするし、かつてのシロップから何か劇的に進化したり変化したりしたところもないような気がする。”生きているよりマシさ”なんていう、タイトルそのまんまで”死んでいるほうがマシさ 生きているよりマシさ”と歌う曲があるにも関わらず、かつてのシロップのような胸を締め付けられる高揚感はそれほどきつくない。”Stop Brain"の、思い切りキャッチーな明るい曲調で”Stop Brain 思考停止が唯一の希望"と歌うサビも、割と気軽に口ずさめてしまう。

これは自分の感受性がいよいよ地に落ちたのか、恐れていたよりも安易にどっぷりはまってしまったのか、それともシロップが元の復活も果たせてないのか。でも何度も聴いて、そのどれでもないと。シロップは、解散前と同じように、日本のザ・スミスと言われるような、ダメ人間がダメ人間としてダメ人間を歌っているようで、実はそこから飛躍して今の姿で帰ってきたんだと思った。”ゆびきりをしたのは”で”勇気を使いたいんだろ”と言っているのが、変にひねくれただけじゃなくて言葉通りの意味を言ってるんじゃないかと思うくらいに。暗い部分を目にして暗い部分を扱ってそこに溺れたとしても、ただそれだけでいいじゃないかとはならないし、ならなくてもそういう人生にとって大切な暗い部分を侮辱も冒涜もしたことにならないんだよと言えるところまで来たんじゃないかなと。そうじゃなけりゃ、年食う値打ちもないでしょと。

聴いてよかった。

B00LBX5X4I Hurt
syrup16g
DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT 2014-08-26

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『Guitar』/LOSTAGE

いい感じで「ねじれた」アルバムやなあ、と言うのが二周聴いた時点での感想です。そしていい意味で聞き流してます。
発売からまるまる一ヶ月遅れでやっと買えました『Guitar』。どうしてもthroat recordsで買いたいもんで、そしてthroat recordsは土日平気で休業するサラリーマン泣かせな(笑)レコードショップなのでなかなかタイミングあいませんでしたが遂に買いに行けました。五味さんにしたら、店で買われたら袋もいるしレシートも減るしコスト掛かるからネット通販で買ってくれってなものかも知れません、僕は音楽業界の中間マージンのことよく判ってないので見当違いかも知れません(笑)。

ライブで聴けた『Good Luck/美しき敗北者たち』と802で聴いた『Flowers/路傍の花』、レビュー記事のどれもが書いてた「歌もの」という表現通りの印象だったのだけど、いざアルバムを通して聴くと、「歌もの」というにはギターも目立ってる。僕は音楽はとても狭い範囲で好きなのを聴いているだけのただの素人なのだけど、メロディラインはどの曲もとても美しいけどそれは今までのハードなLOSTAGEの曲でも同じく美しいと感じてて、それよりもギターが歌ってるような、そこのほうが「歌もの」という言葉が当たるような気がしました。それで、「歌ものと言いつつ、人間の声というボーカルだけじゃなくて、ギターも主役ということかな」、とそう考えるといい意味でずいぶん「ねじれた」タイトルのアルバムやなあ、と思ったのでした。

いつもは歌詞カードとにらめっこでどういうこと言ってるのか理解しようとするのに、このアルバムはずーっと流してずーっとボーカルも含めて「音」を聴いてます。

throat records。五味さんはいつも驚くほど丁寧で感じがよいです。

B00KYMEREO Guitar
LOSTAGE
SPACE SHOWER MUSIC 2014-08-05

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『Singing Bird』/稲葉浩志

円熟。円熟の歌手のアルバム、という表現がいちばんしっくり来ます。例えるなら由紀さおり?そんな感じ。

頑張らなくてもいいんだよなんて
今の僕には聞かせないで

(『Golden Road』/稲葉浩志)

ソロ3作目の『Peace Of Mind』がリリースされた時点で、「ソロはこれで終わりなんだろうな」と思ってました。なんとなく3作ってキリがいいし、『Peace Of Mind』というタイトルも象徴的だし、サウンド的にも素人の耳にも熟成していってるのが判ったし。ところが6年の時を挟んで『Hadou』がリリースされて、その破壊力に圧倒されて。『Hadou』はそれまでのソロ3作と違って、「稲葉浩志バンド」的な音で、歌詞もそれまで以上に稲葉スピリット全開で僕はソロ作品の中で最も好きです。アルバム構成も凄いし、ライブも凄かったし。『今宵キミト』の境地に呆然としたり、『絶対(的)』という(的)の使い方に驚愕したり。

なので、今年5作目のソロアルバムを出すと知った時、「あれ以上のもの出てくるのかなあ」と、これはB’zと違って少し不安な感情を持ってしまってて、どんなアルバムになるのか、稲葉浩志は必ず進化すると思って予想するとしたら、ソロ活動での「バンド」サウンドは一旦『Hadou』で行き着いたと思うから、より「ボーカリスト色」の強い曲で来るかなあ、と思っていたらアルバムタイトルが『Singing Bird』でひょっとしたら意図的にあってるのかな?と思いつつ、届いたアルバムを通して聴いてみたらこれは非常に円熟したボーカリストの、聴かせるためのシンプルでメロディアスな曲が詰め込まれたアルバムでした。音数もそんなに多くないと思いますし、絵で言うと水彩画のような?なんだったら2,3色しか使ってない水彩画のような。昔から聞いたことのあるような、奇を衒わない、歌声を聴かせるための曲。童謡のようかも。

なので、一聴するとあまりインパクトのない、さらっと聴いてしまうかもしれないアルバムですけど、ずーっと聴き続けたくなる大人のサウンド。そして今までの稲葉の歌詞が、アウフヘーベンを実践するような観念に満ちた歌詞だったけれど、それも「激情的」だったと思えるくらい、更に先に進んで円熟した精神性を示してくれる歌詞の数々。感涙。

例えば『Stay Free』:

自由ってどんなものでしょ
逃げるだけじゃこの手には掴めない

『孤独のススメ』なんかはまるごと引用したくなります:

そして、今の世間に逆行するかのような『Golden Road』に痺れます:

頑張らなくてもいいんだよなんて
今の僕には聞かせないで

ムリをしたっていいんじゃない
笑われたっていいんじゃない
誰かのものでもない
僕だけのゴールデンロード

しかしこのアルバムは、『photograh』にトドメを刺すと思います。いつもながらの稲葉得意のいたたまれない未練感の歌で、いい曲だなあ・・・と思いきや、ふと耳を突き刺すフレーズ:

人は誰もがいつか旅立つと
わかっているつもりでいたけれど

ああそっちなのか、この曲はそっちなのかと、B’zでも珍しい、『TINY DROPS』くらいしか例のない、そっちの曲なのかと、自分の年も思い浮かべながらしんみりと聴き入ったのでした。本当にいいアルバムです。


B00JMOQTIM Singing Bird
稲葉浩志
バーミリオンレコード 2014-05-20

by G-Tools