独走会 2015/08/23 夏の終わり

ただ、一さいは過ぎて行きます。

年を取るというのはこの年になると本当に辛いもので、時間はただ流れていくだけ、というような意味の有名な文章があったよな、と思いだしてみたこの一文が、太宰の一節というのを即座に思いだせませんでした。引用するには不適切な気もするけれど、本当にただ淡々とした気分を表すのにこれ以上の一文もないのです。

来週の土日は予定が埋まっているので、今日のライドが夏の終わり。1時間、走りっぱなしで帰ってこれるルートということで、富雄から阪奈に乗り、尼ヶ辻橋西詰のも一つ向こうで南に折れて少しだけ自転車道を走ってすぐ西向いて308号で引き返し、富雄川沿いに北進して生駒に帰る、という全くいつものルート。どこに行くにもこの道を使わないといけない、普段使いのルート。この普段使いのルートを、時にハイケイデンスで、時にシティサイクル並みで、気持ちよく走ります。長い距離でなくても、長い時間でなくても、見知らぬ土地でなくても、そのときはそのときにしかないもので、一さいは過ぎていき二度とは帰ってこないのですから。We're dancing in the stimulation. そのときの体験は常に新しく、それを粗末に扱わないことが人生を有難いものにしてくれる。

行きつけのカフェ、mother beansによってお気に入りのキャロブケーキを買って、「自転車ですか?」と一通りの会話で店を出て、5分もしない自宅に着いたらなんとヘルメットを脱ごうとして初めて忘れてきたことに気づき、慌ててもう一度mother beansに引き返すなんて、たった1時間のライドでヘルメット脱いだことが分からないくらい疲れるようになっちゃったのかな、なんてただ思った夏の終わり。

街の本屋で本を買う - 2015/08/21 ジュンク堂書店難波店 『ロジ・コミックス: ラッセルとめぐる論理哲学入門 』/アポストロス ドクシアディス クリストス パパディミトリウ アレコス パパダトス アニー ディ・ドンナ 高村 夏輝

ある書物の内容価値は、どこで買っても同じはず、なのだ。
東洋経済ONLINEの"今週のHONZオススメ/書評はこれだ!"で知った『ロジ・コミックス:ラッセルをめぐる論理哲学入門』。『放浪の天才数学者エルデシュ』や『異端の統計学ベイズ』など物凄く面白かった記憶があり、かつ、カーリルで調べたら普段利用しているどの図書館にも蔵書なしだったので、これはと思い購入することに。この手のちょっとニッチな本は大規模書店に行かないと空振りするリスクが大きいので、安全策でジュンク堂書店に。そうしたらその日のうちに「紀伊国屋書店、村上春樹氏の新刊買占め」というニュースが出てげんなり。

ジュンク堂で買った『ロジ・コミックス』もアマゾンで買った『ロジ・コミックス』も紀伊国屋で買った『ロジ・コミックス』も、内容価値は全部一緒。そこが書物の良さとも言える。なのに紀伊国屋はアマゾンに対抗するために、新刊買占めして流通をコントロールする(他社書店には取次経由で流すがアマゾンには流さない)ことでアマゾンに対抗するということらしい。

なぜ人々がアマゾンで買うかと言えば、書物の内容価値は全部一緒で、アマゾンで購入することの利便性が他書店で買うより高いからだ。だから実書店は、それ以外の、購入者にとってプラスになることを提供するのが正しい企業努力であることは疑いがない。例えば私は東洋経済オンラインの今週のHONZレビューで『ロジ・コミックス』を知った。こういう本の紹介自体も一つの提供価値。紀伊国屋は新刊を買い占めることで、購入者に対して一体どんな価値を提供するというのだろう。一括仕入れによって仕入れ価格を引き下げて、アマゾンより安価で販売するとでも言うのだろうか。もしそうだとしたら、再販制度を楯にしながらの凄まじい茶番だと思う。


ロジ・コミックス: ラッセルとめぐる論理哲学入門 (単行本)
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『聖の青春』/大崎善生

久し振りに読書で泣きました。
最近ビジネス書ばかり読んでいて、そもそも読書量も落ちているなあと思い、無理にでも小説を読もうと思い、何のきっかけで買ったのかも忘れてしまったくらい前に買ったまま本棚の未読コーナーに立てて読んでいなかった本著を手に取りました。大崎善生氏は、『パイロットフィッシュ』を単行本で読んだことがあって、その印象は都会っぽさを出した超ライトな純文学というものだったので、29歳で逝去した天才棋士のノンフィクションだそうだけどどうだろう?と思いながら読んだのですが重厚さと迫力に心が揺さぶられるまま、あっという間に読み切ってしまいました。作中で初めて知ったのですが大崎氏は将棋雑誌の記者からの作家転向だとかで、将棋のシーンは詳細で、そこがノンフィクションに迫力を更に加えています。

村上聖氏が亡くなったのは1998年、作中には谷川氏も羽生氏も登場するし、棋界は全く知らない私でも谷川氏や羽生氏は知っているのに村上氏のことは全く知りませんでした。幼い頃に難病ネフローゼを患い、病状が悪化すれば立つこともできなくなり高熱で数日何もせず考えることもせず寝続けるしかないような体で、一直線に名人を目指して生きていく姿。何かに取り組むというのはこれくらい徹底しなければならないということを再認識しました。それとともに、勝負に拘るのであれば何を捨てなければいけないのかも。そして、そうすることを「強さ」だと身近な人が認めてくれる環境が最もありがたいものだと言うことも分かります。

そして何より涙を流してしまうのは、聖氏の両親の献身です。難病を背負った我が子に対して、すべてを聞き入れようとし、自分の体を酷使しても息子の希望をかなえようとする。愛というものが何なのか、例え自分の周囲がそれに賛同しなくても、自分は貫き通すだけの強さを身につけなければいけないと強く思いました。自分のことは認めてもらえなくても構わないと思えるようになり、そして、誰かの強さは必ず認められるように生きなければならない。本作は多分、今年一番の読書になると思いますし、生涯のベスト5に入る気がします。

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 大崎 善生

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独走会 2015/07/19 東寺

実を取る。美しさは固より。

三連休の中日、まとまった時間があってどこに走るか。できるだけ長い距離長い時間走りたいのだけど、100kmオーバーの片道ライドは、どこに行っても帰りの電車を考えると予定時間をオーバーしてしまう。目まぐるしく変わった天気予報は最終的にこの日曜だけ雨マークだし、それなら往復ライドで距離を走ることにしようと、京都に向かうことに。

生駒から168号で交野へ、交野から府道736号で松井山手へ、第二京阪の側道で久御山まで出て西に折れて1号で京都まで、というお気に入りのルートで京都へ。いつもは通りすがるだけだった東寺へ今日はお参り。世間は高野山が開山1,200年で盛り上がっていて、奈良もこのお蔭で都道府県別宿泊客数万年最下位から脱出したそうですが、東寺も空海に下賜されたゆかりのお寺。近鉄で京都に行く際に必ず五重塔を目にするのもあってか何故か親近感を覚えるお寺。あの周辺は何かフレンドリーな空気が漂っているなあといつも思っていたのだけど、帰りに見た「煩悩なければ菩提なし」というお言葉でなるほどなあと妙に納得。

世にあるものは須らくあるものであって、それにどう対峙するかがその人の生き方になる。今日のライドは後半完全に足を失ってしまって、家まであと1,2kmというところで休憩してしまったくらいだけど、やり遂げたことを振り返りつつ、次に繋げよう。

と言う訳で久し振りの箇条書き:

  • 交野-松井山手間の第二京阪側道はやっぱり最悪で、絶対選択すべきでない。行きも帰りも同じルートは飽きるなあと魔が差して走ってしまったけれど、バイクよけはしょっちゅう出てくるし、意味もなくアップダウンさせられるし、ペースあがらないのでいいことが何もない。1号線本線の路肩を走るべき。
  • 移動時間3:20で75kmはたぶん現状コンスタントに出せる実力じゃないかと思う。これで行くと5時間で100kmなので、やっぱり今のところ100km走ろうと思うと6時間見ておかないといけない。
  • どれだけ快調でも1時間に5分は休憩を取る。補給食は早めに取る。後半、確実に足が削れる。
  • どこに行っても生駒は最後登りになるので、ボロボロになって帰ってきている姿をご近所さんに見られるのは結構恥ずかしい。

B'z "B'z LIVE-GYM 2015 EPIC NIGHT" 2015/07/05@京セラドーム大阪

稲葉さんがMCで言った「気持ちが大事だからね、気持ち」これに尽きます。
(ネタバレします)

すっかり生活が変わり、ライブの感想も1週間遅れが精一杯だし、早めに会場に来て雰囲気を楽しむこともなければライブの前に徹底的に予習することもない、だから"NO EXCUSE"で”重々!”をやり忘れたり、でも楽しみ方が変わってもLIVE-GYMはLIVE-GYMでした。本編でアルバムチューンをすべてやってくれたのは何かの思し召しだと信じたいくらい。本当に本編を楽しめるだけで十分でアンコールは飛ばして家路に着いたのだけれど、まるで生活が変わればそういうこともあると言わんばかりに、アルバムチューンはすべて本編で聴けたのでした。

"BLACK COFFEE"に燃え上っていたのはアリーナ10列目付近というコアなファンばかりと思われるエリアでも僕だけでしたが、過去のタイトルの胸を抉ってくる選曲の凄いこと。"YOU&I""Don't Leave Me""Blue Sunshine"って。”きっと良かったんだろう僕たちは巡り合えて””似たようなことを何度繰り返して一体どこに辿り着けるの””わかりあうことの難しさを思い知る”ー泣かすじゃないですか。

でまあ”Ultra Soul"はやるよなあ、と一通り盛り上がって、いっつも思うけど続けて”スイマーよ!!"やればいいのに、と思ってたら"スイマーよ!!"ですよ!セットリスト全く見ず行ったのでびっくりでした。アリーナ10列目付近というコア(後略)でも、往年のクロールを模したフリをやってたのは僕だけで、この曲で一体オーディエンスがどこまで盛り上がれたのかちょっと不安でしたが、”魔法じゃない じゃないけどできるよ”はやっぱり泣けるのでした。

この先あとどれくらいライブを観れるのか楽しめるのかわかりませんが、観れても観れなくても悔いのないように、今まで成長のためのエネルギーをくれ続けてきたB'zに失礼のないように、熱心に生きていこうと改めて思ったライブでした。"EPIC DAY"のことを”いちばんまったりとしたアルバム”なんて書いてごめんなさい。あれは尋常じゃないエネルギーが炸裂しているアルバムです。

独走会 2015/06/28 岩船寺

例えどんなに些細で容易くてどちらでもよいようなことでも、やると決めたことをやり遂げることの重大さ。

40歳を迎えて1年、2年、3年と過ごして思うのは、なんであれやろうと決めたことを「やり遂げる」ということが、非常に尊くて大事になっているということ。30代の頃は、やり遂げる中身が重要で、着手したものの当初決めた壮大な到達点に達する見込みがなくなった時点で、達成見込みのないプロセスに時間をかけるのは無駄で、新たな「やり遂げる中身」のためにその時間を使ったほうがいい、という考え方で行動していたように思う。

しかし、40代になると、それがどんな些細なことであれ、例えば毎日朝10分ラジオ英会話を聴くとか、新書一冊読み切るとか、仕事帰りにお店に立ち寄って服を一着買って帰るとか、「こうしよう」と決めたことをやり遂げることが年々難しくなっていく。それは体力的なものもあれば、精神的なものもあれば、物理的なものもある。けれど、「やろう」と決めたことを「やる」力というのは、そこをいい加減にしていくと癖になり、ずるずるとやり遂げられない体質になっていくように感じる。

今日は大体4時間あれば散策も含めて往復するのに十分余裕の距離、片道25kmくらいでよさげな行き先を探してみたら、あじさい寺で調べてみた岩船寺がちょうどよい距離。焦らず飛ばさずじっくり走る。般若寺を過ぎたあたりのセブンイレブンで一息ついて、東を向いて約7kmの強弱のある登り。岩船寺は思いの外の人出で賑わっていてすっかり観光気分。

意外にも7kmの登りが堪えたけれども、初志貫徹で決めた時間内で自走で帰宅。約4時間で50km弱、拝観とパン屋寄り道して十分愉しめてやり遂げたこと、これの積み重ねが40代を形作っていくと思う。

僕は往復同じルートで帰りましたが、般若寺の近くには浄瑠璃寺があるので、行きは308号メイン、帰りは163号メインでぐるっと一周というのも楽しいコースになると思います。オススメの行き先です。

街の本屋で本を買う - 2015/06/10 ふたば書房京都駅八条口店 『日経ビジネス 孤高の製造業ファナック』

日経ビジネスはアマゾンに売ってないので『街の本屋で本を買う』にうってつけなんですがリンクが見栄えしなくて困るのです。

京都には日本が世界に誇る製造業があまた有って、その中の一社を訪問するために乗る電車の発車十数分前に立ち寄った本屋でこれを見つけてしまっては買わないで立ち去ることはできませんでした。父がファナックと同業の工作機械メーカー勤務だったこともあり、興味は一入。こういった知識を知ることは最低限の基礎知識であるにも関わらず、こういった知識を知らずとも商売を続けられたことを恥じ入りつつ、かと言ってこの最低限の基礎知識を次のレベルの、新しいビジネスに繋げるには相当の地道な積み上げが求められるけれども投げ出さない。

独走会 2015/06/07 宝山寺

時間は誰に対しても平等に流れない。であるが故に必ず有効に使える訳ではない。

少しの時間が出来たので、玄関出て1分でスタート地点の宝山寺クライムへ。距離にして2km弱、獲得標高約150m、つまり平均斜度約7.5%というなかなかでほどほどのクライムコース。20分あれば行って帰ってこれるこのコースでも、20分が生まれたときに即出発できる準備が整ってないとその時間を有効に使うことはできない。時間がないないというのであれば、時間が生まれたときに即座にその時間を有効活用するだけの迅速さがないといけない。時間が出来たときに限って、何をするでもなく時間をやり過ごしてしまうのも人の性根という感じはする。だから有効活用するためにスケジュールを立て調整を図るという慣習が生まれるけれど、それを人は誰しも心がける訳ではない。不確定要因に逆らおうとしない人間もいるのである。時間は自分の努力だけで、必ずしも有効に使える訳ではない。そう思い知るからこそ、わずかな時間でも有難いと思い、より活きた時間にしようと心から思うものである。だから、わずかなその20分を、心拍数を限界に上げる辛い時間にしてまで坂を登るのである。


独走会 2015/05/30 馬見丘陵公園

独走というのは、決して、他人を受け付けないということではありません。むしろ、その逆なのです。

富雄のスーパーかっこいい自転車屋さんTRANSITのマスコットキャラクター・ヨシダさんから「明日走りませんか?」というメッセージ。ちょうど時間が取れていたので走るつもりだったのでお受けしまして8:30にTRANSIT前に集合、サコウさんと3人で富雄から馬見丘陵公園の往復約46km走りました。家を出てからフロントのブレーキシューが削れ切ってることに気が付いた整備不良の私を、なんでも出てくる四次元カバンを持ってるサコウさんがシューを出して救ってくれました。

何のために独走を掲げるのか?それは、究極的には「誰とでも走れるようであるために」なのです。生きるのは独りでは生きられない、というけれど、独りでやれることは独りでやろうとする人間の集まりでなければ、助け合って生きていくこともできないはず。それほど熱心に練習できる訳でももともと体力自慢な訳でもない自分は、こういうお誘いを在り難く頂いたときに出来る限り足手まといにならず楽しく走れるように、そのために日頃独走を心がけるという次第なのです。

富雄から馬見丘陵公園のルートはとても気持ちいいです。馬見丘陵公園は美しく整備された公園で、ツーリングの目的地に向いてます。


街の本屋で本を買う - 2015/04/10 ジュンク堂書店天満橋店 『日経ビジネス まるわかりインダストリー4.0』

惹かれたのは『りゆうがあります』だったけれど、「”トヨタが下請け”に!?」の釣りには抗えませんでした。

仕事終わりに少し立ち寄ってみたら、入り口にでかでかと紹介されていた『りゆうがあります』。買うかどうか悩みながら店内を一周していると目に飛び込んできた「インダストリー4.0」。製造業のお客様を多く担当しているので、IoTとかインダストリー4.0は拾い読むようにしているけれど、「”トヨタが下請け”に!?」はさすがにつられてしまう。

早速立ち読みしてみると、ポイントは非常に非常に明快で、深く頷けるものでした:

「トヨタさんがインターネットにつながせてくれない」
ネットに接続すると「生産ノウハウが社外に流出しかねない」と、トヨタが難色を示しているからだ。
故障したらその場で人がすぐに対応できるように「担当者が工場に常駐して見張ってほしい」とトヨタから要望されたという。

日本でITビジネスに関わっている人ならほとんどがこれを読んで頷くと思う。「どうすれば安全に接続できるか」という技術的議論には経営層はついていけず、ひたすら安全策に走る。何かと言えば「やっぱり最後は人です」式の発想になる。そりゃもちろん人間というインターフェースがいちばん優秀に決まっている。決められた手続き・プロトコルでしか仕事ができない機械やコンピュータに比べ、人は自然言語で指示ができる。でも、たかだかと言っては申し訳ないけれど、機械を一日中見張っているだけの「簡単なお仕事」に着く人に、いったいどんなキャリアパスが望めるというのか。3年見張ったら課長とか部長とかって、今時の企業でそんなキャリアパス確保しておけないのは周知の事実だと思う。なぜなら、グローバルでは実際にインターネットを使ってこの部分を機械化・自動化することが進んでいるからだ。

実は生産性なんて何も考えていないのではないか。いつまでたっても自社の生産性だけで、自社の生産性をあげるために、非効率を外部化しているだけなのではないか。確かに人がする仕事を残すのは重要なこと。でもそれは、一日中機械を見張るような仕事のことではない。

こうやって尻込みしているうちに、いよいよものづくりでもまた遅れを取ってしまうのか?

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