『文芸ブルータス』/有川浩、木内昇、舞城王太郎、いとうせいこう、朝井リョウ、伊坂幸太郎、西村賢太、鹿島田真希、堀江敏幸、絲山秋子、万城目学

「文芸」をテーマにコラボした雑誌はときどき出るけど、やっぱり売れてほしいのです!

たまたま東京駅ナカの本屋"HINT INDEX BOOK"で見つけて買ったのですが、ちょうど昨日が発売日だったんですね。yom yom、小説新潮、新潮、オール読物、enTAXI、文藝、群像、小説すばるの八誌に掲載され、単行本未刊行の11作家11作品が収録。紙も厚め、段組みも雰囲気で、本の体裁から「文芸」誌です。

掲載された小説だけでなく、対談や作家ガイド、文藝賞ガイドなんかも綺麗に纏まっていておもしろい。あまり本を読まない人がこれ一冊買って、「文芸」のおもしろさに目覚めることはないかも知れないけれど、「文芸」好きの人は是非ともこれを買って、「文芸」を再び盛り上げていく気概を、業界に伝えてほしいなと思いました。仮にこれが、「文芸」という芸術の高尚さを損ない、一般平均化してしまうことだとしても、それは、「文芸」を衰退させたとは言わないけれど「つまらないもの」にしてしまったとは言える権威主義から「文芸」を取り戻す一歩だから。

好きな作家だらけで、新幹線でどれから読もうかな~と迷った末、『阿修羅ガール』以来、破壊力の虜になっている舞城王太郎と、なんか読んでる間ずっと罵声を浴びせられているような辛辣さ加減の虜になっている絲山秋子の2編を読んだんですが、たまらんかったです。舞城の『私はあなたの瞳の林檎』は、中学生の恋愛小説に見せかけた内面と言語表現の齟齬と統一の話、そして絲山の『ニイタカヤマノボレ』は、これまたアスペルガーを持ち出してカムフラージュされた、世の中の本音と建前の狭間に震災をぶつけてきた辛辣なストーリー。文芸好きは、11作全部既読でも、その他の記事だけでも買って損ないです。

街の本屋で本を買う - 2012/12/01 HINT INDEX BOOK エキュート東京店

休日出勤研修の帰り、わずか5分の滞在で一冊購入。

HINT INDEX BOOKは東京駅ナカのカフェ併設型書店。もはやカフェ併設型の書店は珍しくもなんともなくなった感があります。ジュンク堂大阪本店がカフェ併設でオープンしたとき、オフィスが近くにあったので、便利!と思ったけど、結局カフェを使ったのは1回だけ。購入前の本を、カフェの持ち込んで読む、なんてこと、滅多にありません。高級専門書の一部を読みたい、ということはあるかも知れませんが、それなら「座り読み」で事足りる。カフェで読むならもう少しリラックスムードの本、というイメージだけど、そういうのは買うし。

という訳で、カフェ併設店のカフェは、カフェだけても魅力的なものにならないと存在価値がない、という認識が浸透しているのかいないのか、HINT INDEX BOOKのカフェは、期間代わりで、全国の有名自家焙煎店のコーヒーが飲めるのがウリだそうです。東京駅を普段使いしている人にとっては嬉しいお店。

昨日お店に入ったときは、入口にカレーのタテカンがあったのですが、「誰が本屋でカレー食いたい!?」と反射的に思ったのが正直なところ。本屋と何かの併設っていうのは、結局のところ、敷地運営者側の都合でしかなくて、ユーザーにとってはそんなに大きなメリットがある訳ではないのが現状だと思います。朝来て、さんざっぱら立ち読みして、昼飯食べて、また立ち読みして、おやつ食べて、で1冊買って帰る、みたいな気にさせる作りだと意味があるかなと思いますけどね。

とか思いながら店に入ったら、入ってすぐの雑誌コーナーで目に飛び込んできたのが『文芸ブルータス』。「なんぼのもんや?」と思って表紙を見たら、有川浩、木内昇、舞城王太郎、いとうせいこう、朝井リョウ、伊坂幸太郎、西村賢太、鹿島田真希、堀江敏幸、絲山秋子、万城目学というそうそうたる作家群。既発表・未刊行作品がメインのようだけど、迷うことなく即購入。¥650。

しかし、この手の書店、「HINT INDEX」と銘打ったり、上級志向のカフェを併設したりするタイプの店舗に、「普通の」雑誌が置かれているのには毎回違和感。どうしても、雑然としているというか俗っぽいというか、そういう空気が棚から流れ出て、その店が持っているはずの「コンセプト」にあってないと感じる。とは言いつつも、一定の収入源を確保できる商品ポートフォリオとしては、組み込まざるのが当然ということなんだろう。前回の文教堂中之島フェイスティバルプラザ店と真逆のことを思ったのでした。

元凶は酒とプレゼン至上主義

世間はしばらくの間、「プレゼンがうまくなりましょう」の大合唱が続いている。プレゼンテーションはもちろん重要だ。「プレゼンなんて、綺麗な映像で、いいことばっか言ってるだけだろ」と言うほど、プレゼンの奥深さを理解できていない訳ではない。対象に対する深く厚い知識の準備があって、伝えるための技巧を正しく駆使されたプレゼンテーションは、物事を圧倒的な力で前に進める。

問題は、「軽々しい」プレゼンテーションだ。わかりやすさが求められすぎる余り、誇張どころか半ば「間違い」に近いぐらいに端折った表現が用いられることもあるし、見栄えに心血が注がれたプレゼンテーションもある。フォーマットに則っているが故に「いかにも」ビジネスプレゼンテーション的に見えるプレゼンテーションもある。問題は、端折られたプレゼンテーションはとっかかりがよいという事実だ。よく、「風呂敷を広げるだけ広げる」という言い方をするが、大風呂敷を広げて仕事を取ることは実は容易いことなのだ。それと同じように、それが真実か否かは関係なく、「わかりやすい」「理解しやすい」ストーリーで相手を陥れ仕事を取ることも容易いことなのだ。

コンサルタントはプレゼンがうまい。それは「プレゼンには膨大で重厚な知識と理解が必要」という前提を考えれば当たり前なんだけど、プレゼンがうまいコンサルタントがビジネスコンサルで入った結果、業績がおかしくなった会社を大小問わずたくさん知っている。僕は、結局、それはコンサルタントが悪いのではなく、「見栄え」に目を引かれたその会社が悪いのだと思っている。

同じように、仕事の基盤は人間関係には違いないけれど、ベタベタと深い付き合いになって、無理を聞いたり通したりするような仕事の仕方も、歪を生んでいく。これは「仕事に何を求めるか」ということに尽きる。どうせ仕事をするのであれば。

世間のみんながみんな、プレゼンが大事、プレゼンの技法が大事、みたいな風潮を見るにつけ、それよりも先にやることあるだろう、と思ってしまうのだ。

街の本屋で本を買う - 2012/11/28 文教堂 中之島フェスティバルプラザ店

オープン当日のフェスティバルプラザの文教堂に行ってきました!

結構な頻度で肥後橋駅を使うので、フェスティバルプラザのオープンは長い間楽しみにしてました!「楽しみ」と言うほど、どんな店が入るのかをチェックしていた訳ではないんですが、新しいスポットがオープンするというのは何でもやっぱり楽しみなもの。それが職場のご近所となるとより一層!

で、やっぱりいちばんに足を運ぶのは本屋!ということで文教堂へ。

取りあえずそんなに時間がないこともあって、買いたいと思っていた本を探すことに。乾さんからお勧め頂いていた丸谷才一の『エホバの顔を避けて』、ルクアの三省堂で見かけて次買おうと思っていた小手鞠るいの『その愛の向こう側』、そして博多で買いそびれた東洋経済のバックナンバー、なんとどれもない!!

文庫、新刊、雑誌、バランスよくジャンルが出揃っていて、そのどれ一つとして希望が叶わない。いちおう、少し狭い目の店内には雑誌棚、文庫棚、新書棚、文芸新刊棚、一通り揃ってるんですけど、「本好き」としてはそのどれもが中途半端。もちろん、人通りの多い複合商業施設でかつ駅直結の立地で狭めの店舗なので、売れ筋を万遍なく揃えるというのがセオリーなんでしょうけど、本好きに取っては正直言って使えない。

あんまり辛いこと書いたことなかったけど、この店舗はちょっと来ないかな~と思いました。せめて雑誌棚がバックナンバー豊富とか、いや、いっそ、こういう立地の店舗は、雑誌オンリーのほうが使い勝手いいんじゃないかなと思いました。ビジネス書の陳列もなぜか隅の方だったし。

街の本屋で本を買う - 2012/11/25 ジャパンブックス アントレ生駒店

近所の散歩ついでに買うにはヘビー過ぎるタイトル!

ちょっと用事があって出かけたついでに近所のジャパンブックス(通称ジャパブ)に。先日買えなかった3冊のどれかを買おうとしたら目に飛び込んできたのがこれ。

WORK SHIFT』も同じようなことを言っている。検索したら知識が何でも出てくるようになったら、ロボットが何でも拵えてくれるようになったら、車が自動で運転してくれるようになったら、断然少人数でプロダクションできるようになったら、それだけ仕事は減っていく。その代わりに新しい仕事が生まれるのかもしれないが、そのためにはより素早くスキルを習得する必要がある。

安穏としていられないことだけは事実。より多くのゲインを得ることだけでなく、いかに支出を抑えるかということも考えなければならない。

B00A3URUNM COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2013年 01月号 [雑誌]
講談社 2012-11-24

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街の本屋で本を買う - 2012/11/20 本のがんこ堂 石山駅前店

結局買わなかったんですが、いいロケーションでした。

この前の週、JR博多駅で『東洋経済-解雇・失業』、『週刊ダイヤモンド-カネを生む地図』、そして『ハーバード・ビジネス・レビュー-強い営業』の3冊で迷って結局買えなかったので、あれば買おうと思って入店したのですが、残念ながらどれもなかったのでした。駅前の書店は、このあたりのビジネス雑誌は結構置いてないところがありますね。

「がんこ堂」という店名はインパクト満点でしたが、入ってすぐの棚が話題の新書系で3~4棚構成されていて、「電車に乗る前に手早く読む本を」というニーズにちゃんと対応しているお店と思いました。

B009ZHJZ78 週刊 東洋経済 2012年 11/17号 [雑誌]
東洋経済新報社 2012-11-12

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B009ZHJXL6 週刊 ダイヤモンド 2012年 11/17号 [雑誌]
ダイヤモンド社 2012-11-12

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B009W5IZYM Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 12月号 [雑誌]
ダイヤモンド社 2012-11-09

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晩秋の遠足、若草山と古の墓参

太安万侶は、日本最古の歴史書である『古事記』を編纂した人物です。古事記編纂1,300年を思い出し、これを好機と遠足の行先に太安万侶墓を選びました。

最初はCYCLE SPORT.jpの「まんま・AO-HANI Cycling Team誕生」という記事を見て青葉仁会のことを思い出し、いつか行こうと思っていたハーブクラブに行こうと思ったんですが、若草山に登りたいとも思ってて、ハーブクラブまで行くとちょっとキツいかなと思い、その途中にある太安万侶墓を行先に選びました。

 

若草山へは春日山遊歩道で登ります。今日は春日大社で七五三があるようで人出が多かったんですが、春日山遊歩道もボーイスカウト風な集団や写真愛好家のご老人集団といった方々がたくさん登っていました。自転車も結構見ましたが、なにせ昨日の雨で、塗れ落ち葉がびっしり敷き詰められていて、スリップして大変でした。

 

若草山は何度来てもよい眺めです。今日もたくさんの人が登頂してきましたが、30歳前後と思われる、体格の良い男性二人(恐らく、バイクツーリングしてきたと思われる格好でした)が、「ええなあ」「な、結構ええやろ?」と言ってたのが嬉しかった。若草山に馴染みのある一方の人が、もう一方の人を連れてきたのでしょう。

 

登りも大変ですが、下りも大変。スリップしないよう気をつけながら下ります。途中、トレッキングをしている中年?女性にすれ違うときに「登り大変やったやろ?私もロードもってるけどなあ」とおっきな声で話し掛けられました。

 

お昼は、昨日なにげなく「食べログ」を見ていたら奈良のベストレストランの第3位だった「タリカロ」。注釈に「激辛カリー」と書かれていて、激辛好きとしては見逃すわけにはいきません。本日のスペシャルカレーを頂きましたが、確かに辛い。納得できる辛さです。周りを固めている豆カリーや豆せんべいが、その辛さを和らげるように、ごはんに混ぜて食べるということを教えてくれました。辛さも満足ですが、店員さんの説明や、席に書かれている説明なども親切で、よりカリーを味わえると思います。

 

高畑から県道80号で太安万侶墓を目指します。約7km、平均勾配6%の坂が続きます。最近、余りトレーニングをしていないので、心拍数がすぐ上がってしまうのと、どうも太腿の筋肉が疲れやすく疲れが抜けにくくなっていて、全然登れず、走り慣れたライダーに「こんにちは!」と元気に声を掛けられパスされました。

 

坂を上り切り、183号線に入ってからは、ロードバイクはおろか、通行人も車も全くありません。のんびり、山道を走ります。

 

「太安万侶の墓は茶畑の中にある」ということを読んでいたので、茶畑の広がるところが来たら注意しようと思っていたのですが、左手に茶畑が見えると同時に右手にトイレと思しき建物があったので、ちょっと休憩しようと停止したら、そこに「太安万侶墓」の文字。

 

こんな高台にそれはあります。

 

近くの茶畑で何かの作業をしているおじさんひとりだけ、後はほんとに人の気配は全くなし。太安万侶の生きた時代は人も少なくこんな気配だったのか、それともこの辺りも平城京周辺同様の賑わった場所だったのか。古事記が記しているのはそれよりももっとずっと過去のことな訳です。

 

途中、こんなダムがあるんですが、行きは寄ってみる気力もありません。

 

下山。見晴らしの良い下りの先に、馴染の盆地。

コースはこちら。

 

この後、春日野園地に立ち寄り、はっとして写真を撮り、フロレスタに寄り、TRANSITに寄ってコーヒー奢ってもらって、スペアチューブ買って帰ってきました。総獲得標高1,000km余り。まあまあ登った、晩秋の遠足でした。

お客様を持つということ

 今の会社に転職して1,2年経った頃、昔勤めていた会社と仕事をすることがあり、その担当者の方が先輩で、一頻り転職の経緯などを話した後、その先輩が「これからはどこかのお客さんと強い関係を築いてやっていくことになるんやろねえ」ということを仰った。そのときは、その言葉の意味を、よく判ったつもりでいたのだけど、今、ふと思い出した。

 お客様を担当するというのは、そのお客様に自社との取引をする気持ちになって頂けるのが大前提だから、お客様に信頼してもらえなくてはならない。一方、自分の会社が存続するためには、存続している間は継続的に売上がなければならない。つまり、長期に渡って自社を信用してくれるお客様を持つか、自社と取引してくれる会社を次々と見つけていくか、ということに大雑把に分けられる。

 信用してもらうためには、一定の時間がかかる。一時期だけなら信用してもらうのは容易い。続けられそうもない許容量オーバーなサービスと努力を集中すればいい。そうすれば、とっかかりの信用は得られる。でもそれは、会社として継続可能なものではない。なぜなら「個人営業」だから。
 こういった許容量オーバーなサービスを欲する会社というのは、成長企業であることが多いから、金払いもよいことが多い。成長途上ということは会社としてもまだ小規模で小回りが利く。しかし、成長企業の金回りの良さというのは、それらの企業群のうちの多くが消えてなくなる。つまり、信用してもらうための努力を続けても無駄になる可能性が高い。それを承知で、多数の会社を相手に取引相手を次々と見つけていくやり方になる。この戦法は、続かない。なぜなら、もともと許容量オーバーなサービスと努力を集中しているから。それは、会社として提供できるサービスではないからだ。

 目下、スタートアップとかベンチャーとか企業とか、新興企業が持てはやされて久しいけれど、それらの企業は多くが消えてなくなるというリスクを、取引相手として見たときに忘れてしまっている会社は結構多いと思う。長く続いている業種業界は、長く続いているだけの理由がある。そういった会社と取引をするためのスタンスというのは、いかに信用してもらい、それが長期的に継続できるものかという、非常に高度なものになる。それこそが「お客様を持つということ」だと思う。

『火口のふたり』/白石一文

震災・自然災害、原発、男女の違い、セックス、テーマは括り易く、括り易いと言えど幾重にも折り重なっているのだけど、最も強く迫ってきたのは「この国はいまや東と西で真っ二つに割れてしまったのだ」というものだ。

肌で感じていることだけど、自分達を含めて西日本の人間は、震災被害に関して全くもって鈍感で、被害を実際に受けていないとはいえ、意識は持たないといけないのではないかという僕の問い掛けに、真剣に答えてくれた人はひとりもいなかった。だいたい一様に、「実際に被害を受けていないんだからどっちみちわからない、そんなこと四六時中気に病んで生きていく必要はない」という答えだった。本著で書かれている通り、今や西日本で、スーパーで野菜を買う際に放射能に神経質になる人はいないだろう。何故なら、地元産の、つまり、放射能汚染の心配がほぼない野菜が並んでいるから。東日本にとって、地元産が並ぶと言うことはその正反対のことを意味するのだ。

本著が秀逸なのは、このことを、「今や国民の関心はブラジルワールドカップ。原発は気を引くネタではなくなった」と表現するところ。つまり、本著は東日本大震災から三年後、2014年を舞台に描かれている。この「超近未来」な舞台設定は、今の自分の意識を浮き彫りにする。つまり、「如何に自分の中で、震災が風化しているのか」を、2014年にどうなっているかという描写を通じて、たぶん自分もそうなってしまうだろうと思うところから、今の自分もすでにそれに近づいている、ということに気づいてしまう。

2014年の日本は、明らかに危機に近づいている。近くない将来、首都圏に直下型地震が来ると言われているのだ。2012年の僕たちよりも、2014年のほうがそれに近づいている。そして、福島原発がそのままなら、巨大地震が来た時に国は終わると言っていいのだ。つまり終焉に近づいて行っている。そこに疑問の余地はない。映画「ハルマゲドン」の比じゃないのだ。なのに、特に西側の僕たちは、そんなことなかったことのような生活を送ってしまっている。これは、問題を引き延ばして考えれば、国は終わらずとも国は終わる。自分が死んだとき、自分にとっての国は終わる。だからと言って、日々「明日俺は死ぬかもしれない」と本気で思って行動出来ている人はごく稀。それと同じことを起こしているのが、事故を起こした原発を抱えた今の日本なのだ。

終局をついに知ったとき、主人公の「賢ちゃん」は、「どうせ終わりなのだから、好きなことをやって生きて行こう」と開き直る。それに対して直子は、「こんなになっても、まだそんないい加減な生き方をするの?」と突き刺してくる。この対比に、「これまでは積み上げていくのが倫理観だったが、不確実性が増す中で、明日を予測して生きるより、その都度その都度で生きていくのが倫理観になる」という、俄かには受け入れがたいけれども的確な反論をすることのできないテーマが絡んで、余韻が尽きない。これは『スイート・ヒアアフター』を読んだ際にも思ったけど、西日本に住む僕たちは絶対に読むべきで、ひとつだけ確かなことは、原発問題に対処するためには、facebookなんかで声を上げていても効果がないということだ。

4309021425 火口のふたり
白石 一文
河出書房新社 2012-11-09

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街の本屋で本を買う - 2012/11/11 三省堂書店 ルクア大阪店

読みたい、読みたい、読みたい、小説が読みたい、おもしろい小説が、それも現代日本作家の小説が読みたい。小説に飢えに飢え、とうとう禁断症状のように本屋に。

図書情報館の乾さんに、丸谷才一を読んだことがなかったので、お勧めをお伺いしていたので、まずはそれを買おうかと思ったら、なんと丸谷才一著作が一冊もない。あんまり使いたくないタチなんだけどやむなく蔵書検索機で調べてみたらやはり在庫欄には「X」のマーク。

これは致し方ないと、文庫棚に行く途中で通りすがった小説新刊コーナーで目にしていた好きな三作家-白石一文、島本理生、小手鞠るいの三冊と睨めっこ。もうここは直感です、白石一文の『火口のふたり』を手に取ってレジへ。たぶん、次に読むのは小手鞠るい。いや、多分ではなく決定事項。運命論的決定事項。

4309021425 火口のふたり
白石 一文
河出書房新社 2012-11-09

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