THE BIG ISSUE JAPAN 205号 「スペシャルインタビュー 奈良美智」

再び、「孤独」について。

BIG ISSUEはここで買うと決めているドーチカで「最新号」と言って買ったら奈良美智。不機嫌な子どもと名前ぐらい知ってる、ですが、6年前の大プロジェクト「AtoZ」から震災を経て、今開催中の「君や 僕に ちょっと似ている」までの道のりが描かれていて、わずか3ページのインタビューだけど感動するところがたくさんありました。

人混みに紛れ、共同作業(「AtoZ」を指す)による楽しさと引き換えに忘れてしまったのが、一番のオーディエンスでもある自分自身だった、と奈良さんはいう。

最初に僕の作品に興味をもってくれた人たちは、あの学園祭のような身内の盛り上がり(「AtoZ」を指す)をどう感じたのかなと思ったんです

「共同」という、聞こえの良い、現代では誰も反論することのできないスタンスの内側に、「群れる」という否定的な弱さが忍び込むことを誰もが忘れている。奈良氏は、それを「本能的に人混みに紛れようとした」という言い方をしてる。

集団製作の中で失いかけた孤独な自分自身との対話。

自分は自分自身と向き合わなければいけない。自分自身と向き合っている人こそが、誰かの心にも働きかけることができる。自分自身と向き合っていない人が心を動かされた何かに、間違って心を震わされてしまってはいけない。それは、他の誰かにもまたよくない波を送ってしまうから。

それから、セラミック彫刻を選ぶのかブロンズ彫刻を選ぶのか、というところで、ひとつひとつその特徴とか向き不向きと自分のやりたいことを、丁寧に考えて前に進めてることを読んで、自分もひとつひとつへの思索をもっと徹底してやらないといけないと思いました。

LOSTAGE w/Z@奈良NEVERLAND 2012/12/16

 tが抜けてて「プレゼンス」になってるけどな!でもライブはめっちゃ熱かった!!

 「生活」に行けなかったので、今日のネバーランドはいつも以上に楽しみにしてたのです。朝、TRANSITの店主向井さん、マスコット吉田さんと競輪場ポタリングして、家に帰って投票に行って、ご飯食べて、という慌ただしいスケジュールの後、近鉄乗ってネバーランドに!

 来年2月に解散するZとの対バンということで、先にZが出てくるのかなと思ったら、先にLOSTAGE!遅めに会場に着いた割りに入ったらスカスカだったのに、適当なポジション取りしてしまって大失敗。とは言え、ちょうどフロア中央のポール際なので、ステージはよく見えました。

 五味さんは何をどうしたのか最初からシャウト全開でめっちゃ飛ばしてました。なんかあのキレたような飛ばし方の時ってよからぬ展開になるような…という不吉な予感が走り、案の定というか拓人さんを両腕掴んで「おい!おい!」ってな感じで揺さぶったり、おいおい…と思ったんですが別になんかまずいことがあったようではないようで、『裸婦』なんかはちょっとニヤついたおとなしめなカンジだったけど、全般的にはぶっ飛ばしたプレイでした。

 いちばん心に残ったのは、魚頭さんが参加した後のMCで、「この年になると、なかなか怒ってくれる人とかいなくなるんですよ、そのありがたみが」と魚頭さんに感謝を述べてたシーン。ほんとに使い古された言い回しだけど、叱ってくれる人がいる有難さは忘れてはいけないと思うし、自分はもう、誰かに叱ってもらおうなんて思ってはいけない地点にいるんだという自覚も忘れてはいけないなあと、フロア中央のポール際で激しく頷きながらその言葉をかみしめてました。

魚頭さんが「もう一歩前に来てみんな」と言った後に横になった女の子が猛烈にノリがよくて、根本さんがステージに上がって以降、会場のレスポンスがほとんどZに持って行かれてる雰囲気のなかで、LOSTAGEでこんなにノリのいい客が近くにいたことが今までなくて(LOSTAGEのワンマンでも!これは五味さんもいつも言っている・笑)、物凄く楽しくていいライブになりました!帰りのZIMAがうまくなったと思う(笑)。

ほんとに「孤独」は不幸なこと、なのか?-『ことり』/小川洋子

 日曜日経朝刊の書評で知って即日買って、一週間で読みました。

 その書評に、「世間ではやけに”つながり””つながり”と言われるが、『ことり』の小父さんの人生を読んで、孤独だった小父さんは不幸だったのだろうか?孤独はそんなに不幸なことなのだろうか?と疑問に思わずにおれない」というようなことが書かれていて、そこが、僕を即日買いに行かせた最も大きなポイントだった。

 ほんとに「孤独」は不幸なことなのだろうか?

 『ことり』の小父さんは、一日のペース、一週間のペース、一年のペースを大切に守りながら、独自の言語しか喋らない、鳥を愛するお兄さんと、そのお兄さんを亡くしてからは独りで暮らしている。小父さんは、心を許せる数少ない人びととの交流の他は、できる限り、人と触れ合うことからも遠ざかり、静かにペースを守るように暮らしている。
 この暮らし方は、現代人から見たら、変化を拒み、社交性もない、だから社会の構成員として何の貢献もない、望ましくない生き方と言われそうだし、人との交流を極力拒んでいる点で、つながりもなく、「孤独」で、不幸な人生のように映りそうだ。

 その小父さんの清純さと頑なさに、胸を締め付けられっぱなしで最後のページを読み終えることになるものの、僕は小父さんの「孤独」を不幸だとは一度も思わなかった。僕たちが住む現代社会は、大切なものを守るために、時に、排他的ではない形での「集い」を試みなければならない、というよりもそれを要請されるような社会になっている。だから、小父さんの生き様は、通俗的にはどんなに淋しそうに見えたとしても、現代社会に住む僕たちは、必ずや「手本」として心に留めておかなければならないひとつのスタイルなのだ。

 そしてもう一つ、"つながり"を価値あるものにするのは、「孤独」を尊べる者だけなのだ。「孤独」の価値を、「孤独」の意義を、「孤独」の理由を知らない人がつながっても、そこで生まれてくるのは欺瞞のエネルギーだけ。何かをやった気になるだけど、誰かに利用されやすいだけの。「孤独」を恐れない人たちの"つながり"こそが、本当の"つながり"なのだ。 

4022510226 ことり
小川 洋子
朝日新聞出版 2012-11-07

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街の本屋で本を買う - 2012/12/14 SORA Books 2ビル出発店

今年訪れた書店の中のナンバーワンかも。空港だけは、少し気取った雰囲気も似合う!

福岡空港第2ターミナル3階にある書店。朝、早く着き過ぎた地下鉄福岡空港駅で大きな大きな広告看板を見て、時間もあるしと足を運んでみました。

ターミナル2階から吹上を見上げると、SORA Booksが見えるのですが、その「空の上の書店」的な雰囲気に胸の中はちょっとどよめきます。エスカレーターで3階に上がると、右手に見えるカフェテリア「バンテルン」の奥に書店が広がっていて、足を踏み入れずにおれなくなります!

HINT INDEX BOOKでは、カフェ併設の書店なんて珍しくもなんともなくなったと書いたのですが、このSORA Booksはカフェ併設が魅力になってました。カフェではなくて、書店エリア内にも、コンセント付の座席が10席程度あって、ゆったり時間を過ごせる構成は満点です。
「カフェ」というものは、その空間があることで「落ち着いた時間を過ごす場所」というサインが発せられると思うけど、例えば東京駅など、あまり落ち着いた時間が流れないような場所にそういうものを作っても、ミスマッチというか。東京の人はあの時間の速さに慣れているのでオーケーなんでしょうけど、そうでない僕にとっては、「カフェ」があることで余計に落ち着かない空気を感じるのかも知れません。

一方、SORA Booksは空港という場所にある書店。今朝の僕のように、時間に余裕を持って到着するケースも多い場所で、そういう時間は、ぽっかりと空いた「余暇時間」。そういう時間を過ごしている空間に、カフェと書店が現れると、それだけでリフレッシュできます。

鞄にはもうすぐ読み終わる『ことり』が入っていたので、一泊出張の荷物が入った鞄をこれ以上膨らませ重くしたくなかったので本は買いませんでしたが、そうでなければ何冊も買っていたような、買う気にさせる書店でした。在り来たりなつくりのようで、導線に沿って動いたら、入ってほどなくの絶妙のタイミングで『世界の美しい空港』が目に止まるなど、ここはいい書店だと思います。 

街の本屋で本を買う - 2012/12/09 近鉄百貨店奈良店 K' BOOK CENTER

思い立ったが吉日。そんなときは割とすべてがうまく回る。

 昨晩、「最近、どうも記憶力が弱っている。ちょうど、小川洋子のあの話みたいに…」と、『博士の愛した数式』を思い返していたら、今朝の日経朝刊の書評で小川洋子の新刊の案内が。一読して即読みたくなった、初雪の朝。

 で、いきつけの自転車屋TRANSITに、今日はホイールを買うのでロードバイクではなくて電車で向かうその車中、「そう言えば、KIPSクーポン、入手できてなかったな」と思いだす。PiTaPaの支払カードのKIPSカードのポイントが溜まってるんだけど、KIPSクーポンの発券機が難波にあるとHPに書いてるけどどうしても見つけられずまだ発券できてなかった。ついでだから、西大寺まで行って発券して、近鉄百貨店で買ってしまおう。

 西大寺で駅員さんにクーポン発券機の場所聞いて(南改札のすぐ脇のサービス室?の中にあった)、溜まってたポイント分発券して、近鉄百貨店行って『ことり』購入。ちょっとしたきっかけはセレンディピティにもつながるので、侮ってはいけないし見逃してもいけない。

4022510226 ことり
小川 洋子
朝日新聞出版 2012-11-07

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初雪、フラットペダルで往馬大社

新兵器「プラットフォーマー」を買ったので、試走に、家から2km強ながら行ったことのなかった往馬大社まで走ってきました。

プラットフォーマーというのは、ロードバイク用のビンディングペダルをフラットペダルに変えるパーツで、SPEEDPLAYというビンディングペダル専用のものです。普通の靴でもビンディングペダルを踏めないことはないのですが、とりわけSPEEDPLAYはペダルが小さくて、少し長く乗ると足の裏が痛い。できたらバイクを日常使いもしたいな、と思ってるので、プラットフォーマーを買いました。で、今日はジーパンに普通のパーカーにスニーカー、という普段着で、行ったことのなかった往馬大社へ。

往馬大社は創立年代不明というほどのたいへん古い神社だそうで、大神神社と同じで山を御神体として祀る神社だそうです。その山とはもちろん生駒山。同じ「いこま」でも「生駒」だったり「往馬」だったり、表記が複数あるのが奈良の地名のおもしろいところ。表記の変遷とか調べるとおもしろい。 

 

鎮守の森は奈良県の天然記念物に指定されているそうです。社の麓のこの鎮守の森を見上げると、生駒が如何に宅地開発された元「山」の街なのかというのがわかります。

 

今日は初宮詣の日だったようで、たくさんのご家族が来られてました。そんな中、本殿の前で柏手打つのも気が引けたので、石段途中の賽銭箱にお賽銭をあげて、境内を後にしました。

 

プラットフォーマーは、不思議なもので、ビンディングシューズ履いているよりもよっぽど安全なはずなのに、いつもと違うというだけでなぜか不安定に、特に漕ぎ始めが不安定に感じたものの、普通のスニーカーで十分乗れる普通のフラットペダルに早変わり、でした。ウィンドブレーカーを着て帰りの2kmを走るだけで十分体が温まりました。初雪の降った奈良ですが、ポタリングは寒くても楽しめるいい遊びです。

 

プラットフォーマーとはこれです:

B004GGOI0C スピードプレイ プラットフォーマー ホワイト(ZERO用)
スピードプレイ

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『悟浄出立』from『文芸ブルータス』/万城目学

ちょっと芥川っぽいカンジ?『文芸ブルータス』、文芸好きにだけじゃなくて、あまり本を読まない人に対してもいいツカミの仕事してる。

文芸ブルータス』は11人の作家の作品が掲載されているので、一作一作感想書くのはこの本の魅力を伝えてることにならないけど、敢えてということで。

言わずもがなの『鹿男あをによし』の著者、万城目学の作品『悟浄出立』。西遊記の設定を仮借して、どんなに悟空に警告されてものこのこ妖怪に捉えられるという三蔵法師・八戒・悟浄をバカバカしく真面目にコミカルに描きながら、何事にも一歩引いて傍観者的であるのを分別と取り違えているような悟浄が、「出立」するに至る出来事を、漢語を交えながら「さも」それっぽく描く。この「さもそれっぽい」というのが文芸にとって何よりも大事で、SFなんかその極みだと思うけど、「アホらし」と思っててもそのそれっぽさにぐいぐい引き込まれて、その辺の先生に言われたら「アホくさ」と思ってしまうような「人生の訓示」を、「そうだ。そんなふうに生きなきゃならん」と思わされてしまうのが正に文学。正に文芸。

くどいようですが『文芸ブルータス』、お勧めです!

B00A7BI3TW BRUTUS (ブルータス) 2012年 12/15号 [雑誌]
マガジンハウス 2012-12-01

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街の本屋で本を買う - 2012/12/05 ジュンク堂 淀屋橋店

立ち読みは、普段あまり立ち寄らない棚に立ち寄るに限る。

ジュンク堂淀屋橋店は、京阪シティーモールの中にあります。フロア独占ではないので、他のエリアとの仕切りがあり、その仕切の外側も棚になっていて、雑誌等が並んでますが、そんなに時間もなかったので、外周の棚に沿って奥へ奥へ一頻り進んでみたのです。

途中はだいたいお決まりのトラベルブック棚だったんですが、隅の隅、よくカルチャー講座への申し込みとかそういうのが詰め込まれている棚のひと棚手前のところに、出版社PR誌の棚が。

たまたま手に取った講談社の『』、捲ってみたら二宮清純氏による梨田昌孝氏のインタビューが載ってて、これがめちゃくちゃ面白かった。「いてまえ打線」は実は監督の「転向」だったとか。転向に至る思考回路に唸る。

出版社のPR誌、滅法面白いです。

社内コネの弊害

仕事をする上で、自分の権限ではどうにもならない課題は当たり前のように出てくる。そう言った問題は、エスカレーションと言って上司に相談するのが通例。要は、より権限に持っている人に、対応をお願いする。

この時、自分が、社内の上層部とコネを持っているか、そのお客様が上層部とコネを持っていると、話も対応も早くなるというのはよくある話。何か具体的な仕事を通じて上層部とリレーションが取れているのなら問題ないが、飲み会等の「業務外」のコネでなんとかなることについてはよく考えないといけないと最近思う。

と言うのは、それで問題解決に繋がったとしても、それは、会社のキャパシティを増やした訳ではなく、誰かが使えたはずのリソースを、自分が単にぶんどっただけのことだから。ということは、会社全体での業績が向上するかどうかは、その融通を差配する上層部の判断にかかる。普通は、そういうエスカレーションを受け付けて特別対応するのは、より大規模な案件に限られると思うし、そうすることで会社全体の業績が向上する。けれど、よくわからない「コネ」で融通を聞かせるようなことが常態化していると、本来、別の、全うな案件に使われるべきリソースが、特別扱いするべきではない案件に使われてしまう。単に融通しているだけで、その分、どこかの誰かの売上が沈んでしまう。

その沈んだ誰かというのが、社内ルールと規律に則った、全うなアクティビティを行っているセールスパーソンだとしたら、早晩、そのセールスパーソンは会社に見切りをつけるだろう。たいていのセールスパーソンは、会社のレベルについていけずに辞めていく訳だけど、その中にこういう全うなセールスパーソンが全うな理由で退職するケースが紛れ込んでいて、上層部というのはなかなかそれに気づけないか、手を打てない。こうやって、悪貨が良貨を駆逐していく。

街の本屋で本を買う - 2012/12/04 『横道世之介』/吉田修一

ひょんなことでお知り合いになった方と新大宮で飲みましょうということで待ち合わてお会いする前に、ちょっとだけ本屋へ。啓林堂はお馴染みで、「街の本屋」という感じです。

前々から探し回っている丸谷才一の『エホバの顔を避けて』、やっぱりここでもない!『笹まくら』はあったのでそれにしようかと思ったものの、ここまで来たらもう意地、絶対一冊目は『エホバの顔を避けて』にする!!丸谷才一を探しながら初めて気づいたのですが、ここは文庫が作家順です。出版社では分けてません。棚数の少ない小規模書店は、このほうが絶対いいと思います。

で、何も買わずに出ようかな~と思ったところに目に止まったのが、単行本刊行時に読みそびれた吉田修一の『横道世之介』。吉田修一は『パーク・ライフ』以来読んでますので、この機に購入。「青春小説」って帯に書いてたけど、そうなん!?

4167665050 横道世之介 (文春文庫)
吉田 修一
文藝春秋 2012-11-09

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