『傭兵代理店』/渡辺裕之

4396333595 傭兵代理店 (祥伝社文庫)
渡辺 裕之
祥伝社  2007-06

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昔から推理モノやサスペンスモノやSFモノは手を出さないので、読んでみたらと貸してくれる人がいるのはありがたいです。傭兵代理店というモノが日本に存在してるという突飛さ加減が目新しくて面白かったです。アクションものの映画を観ているよう。「傭兵」とはどういう存在なのかの知識を知れたのもよかった。
海外モノだと、こういった突飛な話の中にも、核となるテーマは国際問題だったりするけど、日本モノだと、道具立てとしては出てくるけどどっちかっていうと主人公の心情に焦点があたることが多いとはよく言われている通りかな。

p199「恐怖を克服できると思うのは、間違いだ。それができると思う奴は早死する」
p254「疑惑というものは一旦意識すると、まるで意志を持っているかのように成長し、所有者を底知れぬ苦悩の渦に埋もれさせる」
p396「おまえたちは、ベトナム、アフガニスタン、イラクと介入を続け、世界中に紛争を蔓延させた。」
p454「ここで焦って動いた方が先に死ぬ」

ここじゃないどこかへ いけなかった

Hadou
Hadou Koshi Inaba 稲葉浩志

バーミリオンレコード 2010-08-18
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歌詞、特に稲葉さんの歌詞については、もう20年付き合って考えてきただけあって、たいていは目にするだけでその魂がすーっと入ってくるんだけど、それでも稀にピンとこないことがある。

最近では、『この手をとって走り出して』のここ:

楽しい時をゆがめてしまう勇気を
しぼり出せずに
わざと遠まわしな言葉
えらんでいたけど

この後、サビの『この手をとって走り出して』につながるんだよね。
それじゃあ、「この手をとって走り出す」ことが、「楽しい時をゆがめてしまう」ことになるんじゃ??
「この手をとって走り出す」ことは、「ここじゃないどこかへ」走り出すことで、
それは「新たなる高み」を目指すことだと思うんだけど、
それが厳しい道だから、「楽しいときをゆがめてしまう」ってことなんだろうか?

違うと思うんだよなあ。

もっと単純で簡単なことだと思うんだけど、カチコチでがんじがらめになったオトコの思考回路は、その単純なことが出てこない。 

the pillows Movement Tour @ なんばhatch 2010/12/12

もう一週間も経ったのかー。楽しみにしていたピロウズワンマン。なんばhatchと言えば今年の初め、さわおがしつこく指笛を鳴らすオーディエンスに激高し、まるでそれを取り繕うかのようにアンコール最後にダイブするという大アクシデントがあったライブ以来。本人たちは意に介してないかもしれないけど、あのhatchに参加してた人達は、ちょっとした緊張感を誰しも持ってた気がする。それに、結構、「さわおさんがキレた後の歌い方のほうが、悲しいけどなんか訴えてくるものがあった」という声もあって(それは、変な空気にしてしまったのを取り返そうとさわおがフルスロットルで歌ってたという、いい意味でのことなんだけど)、負けず嫌いでプロ意識の強いさわおは、「そんなもんなくてもアツいライブを見せられる」と気負ってても不思議はないと思う。そんなこんなで微妙な緊張感。

しかしそんな緊張感とは裏腹に、今回のツアーグッズには「バスターくんインナーイヤーヘッドホン」というとてつもなくかわいいグッズの販売が告知されてたので、これは絶対に買わねばなるまいと、開場18:00というのにその3時間前に会場へ。しかし、僕の熱い思いとは裏腹に、会場についてもそんなに人気がない…。20人くらい座り込んでたんだけど、それが、整理番号の若い人が座り込んでるのか物販の列か、尋ねるだけの勇気も出ず、いったん会場を離れる(笑)。で、10分くらいたって帰ってきたら、スタッフの人が柱にヘッドホンのビラを張り付けてたので、間違いない!と並ぶことに。結局物販は16:00から始まったのかな?問題なく変えました。いっちゃなんだけど、LIVE-GYMの物販に較べたらこれくらいの待ち時間全然なんでもないです(笑)。

チケットは整理番号がA番だったので、開場時間にちゃんと行って、呼ばれた時間に入りました。hatchは前半分と後ろ半分のとこの段差の壁にもたれかかってみるのがいちばん楽で近くてバランス取れてる。今回も早めに入れたのでその場所をゲット。

今回は前方は、どういう経緯でピロウズを知ったのかよくわからない中年男性が非常に多かった!!(僕も中年男性ですが)完全に棒立ちで聴いてるときもあったりして、楽しめてるんかなーと心配になったりしたけど、隣の女の子が、それら男性のノリが変とか逐一笑ってるのを聞いて、「あーオレも後ろで笑われてんのかなー」と思いつつ、人それぞれなんだから笑うヤツがおかしい!と憤ったりしてました。

さてオープニングが『MY FOOT』でちょっとびっくり。セットリストです。

<セットリスト>
01.MY FOOT
02.New Animal
03.アナザーモーニング
04.彼女は今日
05.Crazy Sunshine
06.Ritalin 202
07.Movement
08.空中レジスター
09.Midnight down
10.ローファイボーイ,ファイターガール
11.Funny Bunny
12.Robotman
13.Split emotion
14.Gloomy night
15.FLAG STAR
16.Beautiful morning with you
17.RUSH
18.Sleepy Head
19.Mall Town Prisoner
20.この世の果てまで
21.Blues Drive Monster

En1
01.New Year's Eve
02.ROCK'N'ROLL SINNERS

En2
03.プロポーズ

いつもの「ブラジャー交換」ネタ以外のMCは、控えめなカンジだったと思う。やたらブラジャー交換ネタの時間が長くて、その後「予定にない曲を」といって始まったのが『Funny Bunny』。喜びながら、「ほんとに予定になかったんかなー?」と疑ってしまったけど、後から東京・名古屋のセトリを調べてみるとほんとにやってないんだね、ファニバニ。演奏後、前方のオーディエンスに「新しいだろ?」と呼びかけてたけど、確かに新しかった。今までのような、ぐいぐい押しだしてくるのだけが魅力の曲じゃないんだね。MCが控えめだったのは、しゃべると前回の事件に関わらずにはいれないからなのか、音で取り返すと思ってるからなのか、どちらにしても気迫満載でした。

『FLAG STAR』は予想してました。声割れんばかりで切なさ倍増。

二人で長いマフラー包まって
十二月 はぐれないように
歩いたんだ 永遠を試したくて
ボンヤリ 目印にしてた星に
下らない名前をつけた
キミは何もかも忘れたのか

『MOVEMENT』収録曲の中では、どうも世間的にはいちばん人気薄っぽいんだけど僕はいちばん好きな『Gloomy Night』。あの曲調にあの歌詞というのが泣かせる。泣かせるのに何度も聴いてどっぷりしてしまう。

もう会えないだろう
なりたかった自分を
裏切った
剥製になって時を止めて
魂を手放しちゃえよ
闇にまぎれて 

『Mall Town Prisoner』も嬉しかったなあ。聴いたの初めて?だと思う。周りも盛り上がってるのみて凄い嬉しくなる。

ダブルアンコールが『プロポーズ』でシめたってのもちょっと風変わりなカンジ。この日のライブは、盛り上がりも音も絶好調だったし、セトリも濃縮されたカンジで、シングルを引っ提げて回る東名阪ツアーにふさわしい、ちょっとスペシャルなカンジのいいライブでした。もう、今度からはhatchだからって緊張する必要は、なさそうだな!

奈良公園、愛車とフロレスタ

朝方、いかにも冬の寒空っぽく曇ってたのが、昼前に急に晴れてきたので、軽く走ってみることに。
しばらくGoogleマップで行先考えてたんだけどめんどくさくなって、行先決めずに走り出すことに!

そう言えば奈良公園にぼーっとしに行きたいなーと思ってたので、とりあえず東に東に。

走り出してすぐ気づいたのは、「肩を痛めてるってのはロードバイク乗るには結構つらい!」ってこと。
前、転倒した時は左の腰から体の側面を痛めたんだけど、歩くのもきついくらい痛かったけどロードバイク乗るのには全然支障なかった。問題なく乗れた。
でも、肩は辛い。ちょっとした坂道でふんばりを効かせたくてもハンドルを強く引き付けられないのでできない。

369号走ってたときはあまり痛みを感じず、スピードを出してるときは大丈夫みたい。
ということは低速のときは痛いということで、低速のときにバランスを一定にできず、ハンドルで微調整しなければならず、それで痛むということがわかった。
つまり、バランスをうまくとれてないってことだ。

平城宮跡は1300年祭も終わり、まったくのがらがら。
大極殿前なんか、人5人くらいしかいない。 
これこそ、僕の好きな平城宮跡!ロードバイクでちょっと出かける行先に、こんな場所があることの幸せ。

相変わらず、不思議な光景朱雀門。電車が真ん前を走ります。

 もう少し余裕があったので、奈良公園まで。フロレスタのドーナツ買って、奈良公園で食べよう!と思ったら、奈良公園で遷都祭関連のイベントを何かやってて、あんまり立ち食いする雰囲気じゃなかったので、ちょっと脇に入ったところで。やっぱりドーナツはフロレスタに限る!!

トータル30km強だったけど結構疲れた。久し振りだったこともあると思うし、肩を痛めてたこともあると思うし。でも割とスピード出すとこでは出し続けられたし、坂という坂を今までより少し早いペースで登りきれたと思う。近所にこんな飽きないポタリングコースがあるのってほんと幸せ。

『クーデタ』/ジョン・アップダイク

4309709575 クーデタ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-5)
ジョン・アップダイク 池澤 夏樹
河出書房新社  2009-07-11

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アップダイクは初めて。村上春樹関連で名前が出てきたので読んでみようと。その名前が出てきた記事では、あんまり評価されてなかったんだけど。

まず読んでいてずっと思ったのは、エルレー大統領の親ソ加減。著されたのは1978年。その当時は、アメリカにも親ソの空気があったってことなんだろうか?日本の北朝鮮への集団移住は1959年。ヒッピーブームは1960年代~1970年代。ヒッピーと共産圏は関係ないようだけど、1972年生まれの僕にはイメージとしてどうしてもつながってしまう。「みんないっしょにしあわせに」という物事の考え方が根底にあるものは、形はなんであれ似通ってしまうんじゃないかと思うのだ。

文体がかなり慣れなかった。超絶技巧な文体で、説明は多く、ディティールも細やかで読んでて面白いのは間違いなんだけど、読み進めている途中で事態がぽつんと語られることが多くて、「え?いつのまにそうなってたの?」と巻戻って読むことが何度か。かなり集中力要します、僕のような頭の悪い人間には。

それと、解説を読んで、この『クーデター』はアップダイクの作品の中ではレアなケースというのを知ってまたびっくり。アップダイクの得意な分野は、エルレーが妻四人愛人一人との間で落ちぶれていく、ああいう様をメインに持ってきた小説らしく、もっと読んでみようと思った。

二度目の転倒!

二度目の転倒は、思わぬ形でやってきた…。

今日は雨降りそうだったのと、予定が立て込んでたのとで、大阪へはロードバイクを車に積んでって、大阪市内をロードバイク乗り回すことに。

雨の予感はぴったり当たったけど、市内なら本降りになってもすぐ入れるところ見つけられるし、とりあえずひとっ走り。

で、よくある複合ビルのフロントの広場部分まで乗って入って停車しようと思ったら…

 

なんかハンドルが思う方向に切れない? 

なんだ?またスポークの止めが甘くてハンドルがぶれたか??

 

違う!!ケツ振ってる!!!

 

気づいた時には遅かった。すーーーーっとそのまま横倒しになり肩から転落!!!

 

ぐはーーーーっ!声を出さずにはおれませんでした…。

そばを通りかかった女性が心配して声をかけてくれ、僕が立ち上がるのを見届けてくれました。

 

いやー勉強になりました。左肩はまだ痛いけど。でもこれくらいの転倒で、ロードバイクのタイヤは滑りやすいと知れてよかったよかった。

メンテナンス

しまなみ海道からこっち、満足にクリーニングしてなかったので、一通りクリーニング。

  • フィニッシュライン・バイクウォッシュでフレーム・リム・タイヤを洗ってあげる。
  • ディグリーザーとチェーンクリーナーキットでチェーンを洗浄。
  • スプロケを、リアを外さないでディグリーザーで簡易洗浄。
  • チェーン・ワイヤ・ブレーキ・ディレイラーにメンテルーブで注油。

これで一通り。ほんとはスプロケを徹底的に洗ってあげたかったんだけど、時間の都合上見送り。スプロケとリアディレイラー、プーリーまわりに砂が凄く噛んでいるので、オーバーホールして綺麗にしてあげたいな。

フレームには何が飛び散ったのか結構頑固な汚れがついていて、こういうのが後々錆につながるんだなと実感。やっぱりとにかく走り終わった後のすぐの空ぶきがなにより大事!とこれまた痛感。

次回は、バーテープの交換に挑戦!!

慣らし走行 その2&最近買ったサイクルウェア!

二週間ブランクなので、今日はとりあえず軽く30分~1時間くらい流すだけにしようと軽装で出発。
軽装ってのは、最近買った2XUのMembrane Cycle Jacketと、Defeetのウールグローブ。

2XUのMembrane Cycle Jackectはこんなの。

グレーです。これは今年のモデルじゃないんだけど、今年のモデルより自転車自転車してない感じがよくて、それとグレーの色感がよくて、型落ちで安く買えるならと狙ってたのでした。探しまくって定価より5,000円安く売ってた店で購入。

裏面。バックポケットばっちり。仕切りもたくさん。なおかつ、ジッパーつきのエリアもあり。前面の左にジッパーつきのポケットがあって、そこは裏に穴が開いてる。なんのためだろうこれ?とちょっと考えてみて、あ!イヤフォンを通すんだこれ!と気づいた。買ったときにいくつかついてたタグのひとつに「MP3対応」みたいなこと書いたのがあって「なんのこっちゃ?」と思ったんだけど、ここにミュージックプレイヤーを入れろってことなんだな。でも、ロードバイク乗ってるときに音楽聴くのは関心しません。なのであんまり使わないかな?

上下のコーディネートはこんな感じ。パンツはCCPのマグホス フルレングス。ただし右裾が破れたので(以前の四日市ロングライド記参照)、まくって安全ピンでとめてます~。すでにパンツプロテクターは注文済み。

マグホスは右のポケットだけ異常にでっかくて収容力十分というアシンメトリーな構成と、膝下があらかじめ抜かれててペダリングしやすいというのが気に入って買いました。走りやすいし、お店に入っても街中歩いてもこれならおかしくないので。めっちゃ気に入ってます。

グローブはまさに軍手!Defeetのウールグローブです。ソックスとニーウォーマーをDefeet使ってるんですが、肌触りとか保温性とかすごく満足してたので、これを見つけたときは迷わず買いました。安いし。それに、ごつごつした、ぱっと見カッコいいグローブより、なにせ「軍手」ライクだから、ブレーキレバーの操作が絶対やりやすいんじゃないかなと思って。

 僕んちからはどこに行くにも走って5分と立たず坂を登らないといけないので、ウオームアップ前に心臓が上がってイヤになるのですが(笑)、今日は特に2週間のブランクって結構デカいんだな~って痛感するくらい、持ちませんでした。1時間走らず、早々に退散。

しかし、このウェア群は大正解!まったく寒くなかったです~。見た目も自分の理想ほぼカンペキ。気持ちよく走れる~!

さあ、次回からはいよいよトゥークリップ&トゥーストラップにリベンジ!!

明日はひさしぶりにメンテナンスしてあげます。分解して大掃除~!

慣らし走行

車で図書情報館に出向いて貸出可だったお目当ての本を借り、
(図書情報館の貸出機が新しくなっていて、操作方法が変わっていてちょっと手間取った。それとPCもWin7にアップグレードされてて驚いた)
のんびり過ごして帰ってきた後、すごく天気がいいので、ロードバイクの慣らし走行に。
慣らしといっても慣らすのはロードバイクではなく自分。
先週、暴飲暴食した月曜の夜からみるみる心身ともにおかしくなったので、しばらくおとなしくしていたので。

ギアぜんぶローにして近所のなるべく坂のない道をウロウロ。
フォームが全然決まらなかったりしたけど、そんなの気にしない。
ロードバイクで近所乗りするのもいいもんだな~となんかほのぼの。
先週、府立図書館行ったときに、全身普段オシャレ着の女の子がロードバイクにバックパックで走り抜けたのを見て、
「あ、ちょっといいなあ」と思ったんだ。大阪市内じゃ絶対思わないのにな~。

12月に入っても、休みの日は今日みたいに晴れるといいな。
年内にもう一度、ロングライドに出かけたいと思ってるからな。どこに行こうかな。 

『ノルウェイの森』/村上春樹

4062748681 ノルウェイの森 上 (講談社文庫)
村上 春樹
講談社  2004-09-15

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406274869X ノルウェイの森 下 (講談社文庫)
村上 春樹
講談社  2004-09-15

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映画を観る前に再読しておこうと思っていて、本屋に入った際それを思い出したので文庫本を買った。『ノルウェイの森』は何かの折に(何か節目になるような出来事があった際や特にそういうことがなくて単に思いついた際)再読しているけど、毎回、「こんな話だったっけ?」という印象を抱いている気がする。それにしても今回は、僕の読書におけるグッドラックを、自分で思い込んでる気に入った言い方でいうとセレンディピティを、一生分とは言わないけれど数年分は注ぎ込んだようなタイミングで読めたんじゃないかと思う。なにしろ、本屋で買って読み始め、端役も端役だけど全然記憶になかったけど「奈良」が登場し、iTSでビートルズがダウンロード可能となる日が訪れ、そして読み終えた。僕個人的にはこれでもう十分。十分、『ノルウェイの森』は僕に生きる力をくれた。実際、会社の人がお土産にくれたラーメンを食べ過ぎ胃を壊した翌日から、微熱が続き何も食べられなくなりみるみるおかしくなって精神的にも完全におかしくなってしまった僕をたった10時間足らずの読書が引っ張り上げてしまったのだ。

「こんな話だったっけ?」という印象以外で、今回抱いた印象で最も大きかったのは、「こんなにわかりやすい小説だったっけ?」というもの。これは、僕が村上春樹の作品を読み続けてきて慣らされてきたからなのか、僕の読書の能力が向上したからなのか、物語を注意深く受け取る感覚が失われ、通り一遍の筋書しか頭に入らなくなったからなのか、その辺は自分自身ではわからない。けれど、自分自身としてはとてもよく理解できる小説に感じられた。例えば「全てが終ったあとで僕はどうしてキズキと寝なかったのかと訊いてみた。でもそんなことは訊くべきではなかったのだ。」の部分。そりゃもちろん聞くべきではないよ。今の僕はそう思うし、その理由もパッパッと頭の中にひらめくけれど、若い頃にこれを読んだときは全然違うこを考えていたと思う。できないことの理由を問うことから始まる問答を。「訊くべきではない」というのは、単に「どうして寝なかったのか」という原因を訊くだけが対象じゃない。「寝る」ことに関わる様々な意味が、そう簡単に説明できるようなものではそもそもないから。そんなところに考えを飛ばしていたはずだ。でも今の僕はもうちょっとクリアに「なぜ訊くべきではなかった」のか、思いを巡らすことができる。

なぜ38歳の僕がこの本を今、それも再読の再読で読んで、精神的に立ち直ることができたのかはよくわからない。普通に仕事はできるものの、仕事に行きたくないとまで思うくらい、ちょっと崖っぷちだった状況から、なんとか戻ってこれたのは、この本の力が多少はあると思ってる。確かに、この本を読んでる最中、自分を覆っている時間の殻のようなもの、どうしてもそこに留まることはできないのに少しの希望の欠片みたいのを見つけては留まれるような気になっている自分の殻のようなものが、二つに割れて自分から剥がれ落ち、残念だけれどそれは剥ぎ取って前に進むしかない、そういう感覚が現れたのだ。そうしてこの間に僕にとって現れた変化というのは、無暗に本を読む速度が上がったということだった。