私はIT企業に勤めていて、IT企業というのはサポートセンターというのを構えているのが常識。弊社もサポートセンターというのを構えていて、導入後のシステムにおける問題は、サポートセンターに電話してもらうことになっている。しかし問題と言っても幅広く、もともと提案していた内容が、要件を満たさないような構成・仕様だったとしたら、それを伝えられてもサポートセンターの人としては困ってしまう。けれどもお客様からしたら問題は問題で同じで、その内容の性格によってサポートセンターに電話するべきか、営業に電話するべきかを判断するのは面倒、だからいつもどちらかに偏ることになる。そしてサポートセンターの人は、「それは仕様の問題かどうか」というところの判断がシビアになり、少しでもその色が見えたら、「それは仕様の問題なので営業に電話しろ」とお客様に案内する。
今、わざと「営業に電話”しろ”」と乱暴な言葉づかいで書いたが、サポートセンターはお客様にけしてそんな言い方はしない。それはもちろん営業サイドも同じなのだが、先日、必要があってサポートセンターのコールログを閲覧していたら、「営業からサポートに電話しろと言われた」とお客様が仰っている、というログを見つけてしまった。
お客様がサポートセンターに対して、本当にその言葉づかいを使ったのかどうかは、わからない。最初に書いたような理由で、サポートセンターへの電話をお願いしたことが(それ自体は事実)不愉快で、「しろと言われた」と言うふうに実際に言ったのかもしれない。そして、もし「しろと言われた」とお客様が仰っているとしたら、それはかなり重要な情報で、営業サイドとしてはもちろん「しろ」などと言うはずはなく、なのにそうお伝えになるということは営業サイドに対する心象が相当悪化しているという判断材料になる。ところが、サポートセンターはそのあたりのニュアンス情報に敏感ではないことが多い。「連絡してくださいと言われた」だったのを、「しろと言われた」と記載することが、往々にしてあるのである。
社内しか閲覧しない記録について、どのように記載するかは、効率重視であることが圧倒的に多く、簡潔に記載することを推奨されるが、それは、必要な情報までも削ることを意味しない。 「しろ」と言われたのか、「してください」と言われたのか、どのようにお客様が表現するかは重要な情報で、その重要性に無自覚的なサポートでは、お客様の気持ちをくみ取ってサポートすることはできるはずもなく、勢い、フィールドへの負担を増やすばかりになる。
これは決して業務上に限ったことではなくて、日常でもどのようなニュアンスでそれを伝えているか、というのは非常に繊細な問題で、言葉は100人の使い手がいれば100人の使い方があるのだから、相手がそれをどういうニュアンスで言っているのかを、これまでの経緯や背景や言外の内容から汲み取っていく姿勢は必要だし、相手がそうしてくれるという信頼に添って、判ってもらいやすく自分の言葉を出していく、という姿勢もまた必要。