僕はIT企業に勤めているので、定期的に新製品の社内説明会というのがある。
新製品に投入されている新技術は、お客様に説明するかどうかはさておいて、社員はきちんと理解していなければいけなそうなものだが、現実にはなかなかそうではない。
有名なところでは、コカ・コーラの材料と製法は、(日本)コカ・コーラの経営トップでも知らされていない(それが本当かどうかはさておいて)というように、社員でも知らないケースももちろんある。
なぜ、自社製品のことなのに社員にも知らせないのか、というのは様々考えられる理由があって、例えば、その社員が転職した場合に情報が持ち出されるとか、転職せずとも不用意に知人に話してしまうことによる漏洩を抑制する、とか。
食べ物の材料・製法と、ITのような製品の技術とは、納得して買いたいというレベルが違うよ、とお客様には言われそうだが(でもどっちかって言うと命に直結する食べ物のほうが大事なんじゃないの?と思わなくはない)、ITであっても、そういうことはある。
いわゆる「企業秘密」だ。
新製品説明会を受けてる最中、その「説明のつかない」技術がひとつ出てきて、このことを思い出した。それは企業秘密というよりは、説明している人にもその技術詳細が知らされていない、というパターンだったのだけれど、これをお客様に自分が説明するとき、必ずお客様から「理屈がわからないとなあー」と言われるな、というイメージがすぐに浮かんだのだ。
なんとなく、昔はそういう、「その製品の特徴」のようなものは、「こらすごいでんな。どないなってまんのや?」「そらお客さん、企業秘密ですわ」みたいな会話で、「よしこうた!」となったイメージがある。それは、実際にその製品の特長たる機能が、実際にそのように動作するからだったと思うけれど、最近は、説明責任だなんだと言い始めて、理屈で説明できないものは買わない、という流れが一般的に感じている。
でも、説明のつくものなんて、実はたかが知れていて、そんなんではイノベーションは起きない。そういうことも、知っている。その上で、「よしこうた!」にならなくなってしまった時代の流れも判っていて、根深い問題だなあと考えている。